昨日開幕したブダペスト世界陸上。

連日、トップアスリートが、原始の種目で人間の身体能力の限界に迫るパフォーマンスを披露してくれています。

陸上競技といえば、やはり男子100m。その単純明快な競技、勝者が手にする人類最速の称号の輝きは、あらゆるスポーツの中で最高級でしょう。



サニブラウン・アブデルハキームが予選6組に1位通過した、その男子100m。優勝候補の一角に米国人でもジャマイカ人でもないケニア人の名前が挙がっているのです。

アフリカ記録の9秒77のPBを持つファーディナンド・オムルワ、27歳です。

長距離王国ケニアから世界的なスプリンターが登場したことは、長らくスポーツ界で信じられてきた仮説に一石を投じることになりそうです。

曰く。「アフリカ系米国人が身体能力、特に陸上短距離などのパワー爆発系の種目では圧倒的な素質がある」のは「アフリカ大陸から過酷な船旅で北米大陸に運ばれた、生き残りだから」。

つまり、強靭な肉体と生命力の選抜試験を潜り抜けた個体であり、彼らの子孫にはその素質が凝縮されているると考えられているのです。

さらに、奴隷たちはより強い個体同士を競走馬のように掛け合わされ、その傾向はより強くなりました。

この奴隷船の最も長く過酷な旅の最終寄港地が、ジャマイカです…そういうことなのです。



そして、アフリカの高地に住む人々は幼い頃から往復20kmを超えるような井戸汲みや通学を日常としており、長距離走に必要な素質を装備していったのです。

高地に住む人が平地の都会に移住し、クルマ社会に馴染んでしまうと一代でその特性は失われてしまう…そんな事例も事欠きません。



では…身長175㎝、体重83㎏のファーディナンド・オムルワの存在はどう解釈すべきなのでしょうか?

もちろん、170㎝前半のスプリンターは珍しくありません。長身スプリンターはストライドで優ってもピッチで劣り、小さなスプリンターにはその逆が当てはまります。ボクシングでいう〝フレーム〟と同じ理屈です。

「オムルワ」は、日本人がパワーで黒人や白人をネジ伏せるという考えられないことをやってのけている「大谷翔平」と同じ突然変異なのでしょうか?

それとも、そもそもの「仮説」が間違っていて、ケニア人は長距離だけでなく短距離も速いのでしょうか?

「黒人奴隷最強説」ではなく、そもそも「黒人最強説」こそが正解だったのでしょうか?