語り尽くされていることですが、大谷翔平では漫画や映画の素材になりません。 

フィクションに求められるのは、読者や観客を自然と誘う最低限のリアルです。

ユニコーンがやってることは、フィクションであっても到底受け入れ難い所業で、現実に目の前で起きているからこそ、異常なまでの驚愕と共になんとか受け入れることが出来ているのです。

フィクションに求められるのは、挫折と栄光、罵倒と賞賛の間に架けられた細いタイトロープを行ったり来たりする危なっかしい主人公です。

藤浪晋太郎が優勝に最も近いオリオールズに電撃移籍したとき、アスレティックスのような「気楽な場面では投げられない」「緊張感のあるマウンドではムリ」と、悲観的な意見も少なくありませんでした。

大方の予想をひっくり返すのは、映画や漫画の主人公が見せる真骨頂です。

しかし、藤浪は映画の世界に生きているわけではありません。

映画なら2時間ちょっとでハッピーエンドが訪れますが、野球ではそんな時間じや1試合もこなせません。

圧巻のリリーフを見せようが、自己最速の165kmをマークしようが、大谷翔平のライバルはまだタイトロープの上で揺られています。

藤浪晋太郎、面白いですねぇ。

「100マイルを投げる投手はマイナーにも掃いて捨てるほどいる。しかし、本物の威力を持つ100マイルは、メジャーを探したって滅多にお目にかかれない」と、ブランドン・ハイド監督が認めた本物。

最下位球団から首位を争うトップ球団へ。藤浪はシンデレラ・ストーリーに乗りました。

彼がチャンピオンリングを指に輝かせながら.ボルチモア市街をパレード、沿道の何十万人もの観衆から大歓声を浴びるーーーこれが映画なら、そんなハッピーエンドの秋が、台本通りに主人公を待ち構えてくれています。

しかし、ここはハリウッドではありません。

どんな残酷なことが起きても不思議じゃない、メジャーの舞台です。

まだまだ、正念場が続きます。



がんばれ、晋太郎!