難敵(強敵ではありません)スティーブン・フルトンを圧倒したことで、井上尚弥を多くのメディアがPFP1位に推す気配を漂わせています。

現在の主要PFPにおける井上のポジションを確認すると、最もバイアスのかからないTransnational Boxing Rankings Board(TBRB)で1位、トップランクと業務関係にあるESPNと、ゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)の資本を受けていたリング誌で2位。

ESPNではテレンス・クロフォード、リング誌はオレクサンデル・ウシクを1位としてます。

PFPの概念そのものは、無差別級しかなかった時代からライト級とミドル級が生まれた19世紀後半には芽生えていたはずです。

「無差別級(ヘビー級)では体格的に厳しいが、技術とガッツはヘビー級以上」。そんな身体が小さいファイターを救済する、それが階級が生まれた契機であり、PFPの発露でした。

そして、パウンド・フォー・パウンドという言葉が熱心なボクシングファンに知られるようになったのは1950年代、シュガー・レイ・ロビンソンの出現によってでした。

当時は「ヘビー級偏重時代」。世界ヘビー級チャンピオンのロッキー・マルシアノこそが世界最強の男であり、ボクシングの顔でした。

それでも、専門家やメディア、目の肥えたファンは「シュガー・レイをなんとか正しく評価したい」と持ち出したのがPFP でした。

階級を無視したなら、シュガー・レイが最強。そのための〝言語〟がPFPだったのです。

PFPをランキングし、定期的に発表されることになるのは、1980年にリング誌が年間アワードに組み込む形でスタートしたBest Fighter Pollから。

ロビンソンの代名詞であったPFPを年間表彰の形で1980年から新設したのは、モハメド・アリの衰えと引退でボクシング界が大きな危機に瀕していたことと無関係ではありません。

新しいスター候補は、アリと同じ五輪金メダリストのシュガー・レイ・レナード。

しかし「ボクシング・イコール・ヘビー級」の時代で、レナードはウェルター級。

ライトヘビー級で金メダルを獲ったアリは、はプロでヘビー級に適応しました。

しかし、ベストウエイトがジュニアウェルター級と言われていたレナードではどうしようもありません。

そして、リング誌が年間PFPをスタート。ここで、またPFPが持ち出されます。

日本では中量級ウォーズとも呼ばれた、レナード、マービン・ハグラー、トーマス・ハーンズ、ロベルト・デュランらを核としたムーブメントは、史上初めてヘビー級を凌駕する興業をいくつも成功させます。

このときのリング誌やトップランクが仕掛けたマーケティングが成功を収めた〝脱・ヘビー級〟の延長上にオスカー・デラホーヤやフロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオ、カネロ・アルバレスが誕生したのです。

PFP。その概念を、最初から見直すと、このMythical Ranking(妄想ランキング)の性格、その輪郭がはっきりと浮かび上がってきます。

そうです。PFPの正体は「ヘビー級で戦えないことのイクスキューズ」に他ならないのです。

奇しくも、昨日の「井上vsフルトン」を振り返った解説者席で、PFPに話題が及ぶと村田諒太はこう言い放ちました。

「個人的にはPFPには興味ないんで。そんなのタイソン・フューリーやろって」。

おそらく、村田はPFPが「ヘビー級からの逃避を正当化する詭弁」「弱者救済のロジック」でしかない成り立ち、歴史を知っているのでしょう。

個人的には、80年代から米国ボクシングに惹き込まれたこともあり、PFPという詭弁術は非常に興味深いものであり続けています。


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▶︎「Fighter Of The YearがあるのにPFPなんて要らない」→リング誌が年間PFPをアワードに組み入れたときからその批判はありました。

そして、リング誌は経営不振の影響もありましたが、2016年で年間PFPを廃止してしまいます。


▶︎「十人十色のPFPには意味がない」→その通りです。「リング誌のPFPは権威がある」と思い込んでいる井上信者の多くはPFPを最近知って、Fighter Of The Yearの存在すら知らないのでしょう。

しかし、十人十色でないPFPキングが出現したら?

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階級が違う選手の優劣なんてつけることは出来ません。しかし、100人が100人、全く同じ妄想を見ているとしたら、もはやそれは妄想ではなく真実ではないでしょうか?

つまり、かつてのマニー・パッキャオやフロイド・メイウェザーのように、どのメディアでも満票のPFPキングなら、それはMythical Rankingなどではなく、Real Rankingなのではないでしょうか?

まだまだ続きます。