那須川天心のデビュー戦は122ポンドのジュニアフェザー級契約6回戦で、相手は日本バンタム級2位の与那覇勇気でした。

アルファベット団体が自分たちの都合で作る世界ランキングとは違い、日本に1人しかいない王者を頂く日本ランキングにはそれなりの説得力があります。

与那覇は上位選手の敗北による繰り上げの2位とはいえ、WBAなどのアルファベット団体の好き勝手なランキングとは全く違う、正真正銘の日本ランカーです。

ここでケチをつけるとしたら「1階級下の日本ランカー」ということぐらいでしょう。

その相手に、何もさせずに大差判定勝ちを収めたのですから「現時点で日本王者の実力はある。並大抵の選手ではない」(内山高志)、「日本タイトルまでは順調に行く」(具志堅用高)と見るのが、常識的でしょう。

ここも否定するなら「今回は6回戦だったから日本タイトルマッチの10回戦なら後半スタミナ切れでグズグスの試合になった」という見方でしょうか。



そして、さらに高い評価を与えているのが「キック時代に見て、センサク・ムアンスリンのプロ3戦目で世界王者の記録を塗り替えると語ったことがあるが、デビュー戦を見たあともその思いは変わらない」という大橋秀行です。「センサクの3戦目を更新する」を額面通りにとらえると、次の試合で世界王者になれるということ。

いくらなんでも、それは…と思った人は世界のボクシングを知らない人です。

WBA/IBF王者マーロン・タパレスなら、オッズも専門家予想も圧倒的とはいかないまでも、天心有利になるでしょう。

もちろん、タパレスに勝つことにどれだけの価値があるのかは、また別の話です。

「世界王者はみんな強い」「世界ランカーに弱い奴はいない」…プロボクシングは普通のスポーツなら当たり前のことが、当たり前でない狂気の世界です。

150年に1人の男が言うように「ジムが狙わせるなら、最短記録で世界王者になれる」のはかなり高い可能性がありそうです。

そして、このデビュー戦で唯一、明白に付けられた疑問符となると「ラッシュで仕留めきれなかった」(読売新聞)という「パワー」について。

もちろん、那須川天心がこれからどんなプロボクサー像を描いていくのかは、おそらく本人にもわからないでしょう。

単純な手や足のスピードでは語れない独特のリズムに乗ったスピード、そしてボクシングの距離でも想像を大きく超えていたボディワークとデフェンス勘。デビュー戦の18分間から見えてくる天心のボクサー像は、KOを量産するビッグパンチャーではありません。

もちろん、雰囲気に飲まれることなく強烈な意地を見せて立ち続けた与那覇が、KOするには最も厄介なタイプであることも忘れてはいけません。

その与那覇は那須川のパンチについて「キレで倒す感じで、タイミングで貰ったら危ないところもあった。今後はKOしていくんじゃないか。ステップインして打ってきたのはガード越しでは大丈夫でしたが、タイミング良かったら倒れていた」と、危険な拳であったと説明しています。

これから、ビッグパンチャーの本性を現して来ることも十分予想できます。


現時点の天心はどこまで強いのか?

4月24日に更新予定の日本ランキングで、那須川天心の名前がどの階級に刻まれるのか。

空位のジュニアフェザー級なら次戦で決定戦のポジションに立てるかどうかは微妙。バンタム級なら与那覇に代わって2位にランクインの可能性大。1位は比嘉大吾のままでしょうが、那須川にとって比嘉はオーダーメイド、相性的にも勝ち目は低いと思います。

では、日本バンタム級王者の堤聖也なら?

「天心vsボクシング」(比嘉が「ボクシング」ではないという意味ではありません)、これは面白い試合になりそう。

ただ「世界」という視座からは、井上尚弥が焼け野原にしたバンタム級で残飯を漁るよりも、ジュニアフェザー級でその井上を追いかける、という姿に期待してしまいます。