1952年にJBCが設立されてから71年。日本人の世界王者の数を階級ごとに振り返ると、はっきりした傾向が読み取れます。

【ストロー級(1987年創設)】36年間で13人。=2.77年に一人


【ジュニアフライ級(1975年創設)】48年間で16人=3年に一人


【フライ級(1913年初代王者誕生)】71年間で20人=3.55年に一人


【ジュニアバンタム級(1980年創設)】43年間で15人=2.87年に一人


【バンタム級(1889年初代王者誕生)】71年間で12人=5.92年に一人


【ジュニアフェザー級(1976年創設)】47年間で11人=4.27年に一人


【フェザー級(1889年初代王者誕生)】71年間で5人=14.2年に一人


【ジュニアライト級(1921年初代王者誕生※)】56年間で10人=5.6年に一人
※1967年の沼田義明から。

【ライト級(1896年初代王者誕生)】71年間で3人。=23.7年に一人

【ジュニアウェルター級(1926年初代王者誕生※)】46年間で3人。=15.33年に一人
※1967年の藤猛から。

【ウェルター級(1888年書だ王者誕生)】71年間で0人。


【ジュニアミドル級(1962年初代王者誕生)】51年間で4人。=12.8年に一人


【ミドル級(1886年初代王者誕生)】71年間で2人。=35.5年に一人


【スーパーミドル級(1984年初代王者誕生)】0人


【ライトヘビー級(1903年初代王者誕生)】0人


【クルーザー級(1979年創設)】0人


【ヘビー級(1882年初代王者誕生)】0人

※複数階級制覇の選手はそれぞれの階級でカウント。暫定王者も含んでいます。印は最初の世界王者が誕生してから消滅と復活を繰り返してきた階級のため、定着した頃から数えています。


〝世界王者ゼロ〟の階級を除いて、出現周期が10年以上かかっている階級はフェザー級(14.2年に一人)、ライト級(23.7年に一人)、ジュニアウェルター級(15.33年に一人)、ジュニアミドル級(12.8年に一人)、ミドル級(35.5年に一人)の5クラス17人。

いずれも、日本人にとっては重く、挑戦機会が少ない階級です。いずれも海外で一定以上の人気を持つ階級ゆえに、日本側が好き勝手できないからチャンスが少ないクラスと言えます。

ミドル級は35.5年に一人しか世界王者が生まれない〝超難産クラス〟ですが、実質的に日本最重量階級で、競技人口も極端に少なく、竹原慎二のような「奇跡」か、村田諒太のような「突然変異」でないと王者に就くことは至難の業です。

ちなみに、BoxRecによると今日現在の日本人ボクサーの競技人口で最も多いのはフェザー級の142人。以下、バンタム級(134人)、ジュニアライト級(131人)、ジュニアバンタム級(122人)、ジュニアフェザー級(121人)と続き、ライト級は六番目の116人。

日本人にとってのライト級はストロー級(58人)やジュニアフライ級(61人)、フライ級(93人)よりも層が厚いクラスなのです。

もちろん、世界王者を輩出するに必要とされるのは、単純な競技人口だけではありません。ライト級が超難関になっている原因は世界的な注目度が高く、レベルも高いからです。

これまで、この階級で世界王者になったのはガッツ石松、畑山隆則、小堀祐介の3人だけ。防衛したことがあるのは石松の5回、畑山の2回。

小堀は評価の低いホセ・アルファロからタイトルを獲りましたが、初防衛戦で陥落。畑山はヒルベルト・セラノという穴王者からタイトル奪取、2度の防衛戦も坂本博之とリック吉村という〝日本代表〟が相手だったことを考えると、畑山と小堀がライト級王者になれたのは「奇跡」の部類に入るかもしれません。

まともな相手からタイトルを奪いしっかり防衛を重ねたのは石松だけ、ということになります。

評価の高かったロドルフォ・ゴンサレスからタイトルを奪い、5度も防衛した石松はロベルト・デュランやエステバンデ・ヘスス、ジュニアウェルター級でセンサク・ムアンスリンという伝説とも拳を交えました。



そして、来週4月8日に吉野修一郎がこのライト級の〝世界〟に挑戦します。

〝世界〟といってもタイトルは何もステイクされていません。

しかし「対戦相手がシャクール・スティーブンソン」というだけで、この試合を〝世界最高峰への挑戦〟と言い切っても誰も反論しないでしょう。

フェザー級、ジュニアライト級で世界王者になったスティーブンソンは、この試合がライト級デビュー戦。

2016年リオ五輪で56kg級で銀メダルに輝いたサウスポーは、2017年のプロ転向から19戦全勝9KO。「明白に落としたラウンドは一つもない」と言われる内容で無敗街道を驀進しています。

吉野も16戦全勝12KOと無敗ですが、誰に勝ったかとなるとキャリア最晩年の伊藤雅雪と中谷正義。対戦相手の質には大きな開きがあり、同じ全勝でも失ったラウンドは数え切れません

しかも相手は勝利最優先のスタイルを徹底する、やりにくいサウスポー。会場も完全敵地のニューアーク。

現在のオッズはウィリアム・ヒルでスティーブンソンが1/12(1.08倍)、吉野は6/1(7倍)。

vbetがスティーブンソンに1/33(1.03倍)、betfairが吉野に49/5(10.8倍)を付けるなど、ブックメーカーから見た吉野は完全な噛ませ犬です。

ここ5年ほどでも亀海喜寛のミゲール・コットや、村田諒太のゲンナジー・ゴロフキンのように名前だけならスティーブンソンが足元にも及ばないグレートに日本人が番狂せを狙って挑みましたが、亀海も村田もアンダードッグであっても噛ませ犬ではありませんでした。十分チャンスがあると考えられていました。

実際に亀海はコットを「キャリア最強の打たれ強さ」と驚かせ、村田はボディブローを中心にGGGを追い込みました。

しかし、31歳の吉野が挑むのは全盛期に突入した25歳の超強豪。人気以外は全てを持っているスティーブンソンです。

誰がどう考えても、ノーチャンスです。

「Anything can happen in the ring(リングの上では何が起きても不思議じゃない)」という、このスポーツの格言に縋り付くしかありません。

無理やりにでも吉野のアドバンテージを探すと、ウェルター級でデビューしてライト級に〝圧縮〟された吉野のフィジカルが、ライト級初戦のスティーブンソンのボクシングを混乱させるかもしれないということ、そのスティーブンソンが舐めてかかってくることでしょうか。

そのとき、何かが起こるかもしれません。

もし、吉野が勝つようなことがあれば、世界王者のベルトはなくても、文句無しに日本ライト級史上最大の勝利です。

この階級ではガーボンタ・デービスとライアン・ガルシアが4月22日に激突、5月20日にはUndisputed Championのデビン・ヘイニーがワシル・ロマチェンコを迎えます。

もし、吉野が史上最大の番狂せを起こすと、そんなメガファイト、注目ファイトの勝者と戦うチャンスが訪れても全く驚く必要がありません。

さあ、世界を驚かせましょう!