日曜日のゴールデンタイム。

具志堅用高の防衛戦は、日本中の注目を浴びる中でゴングが鳴らされていました。

ウォーミングアップの汗に、ワセリンを塗ってテカった精悍な顔で君が代を歌う具志堅用高は、間違いなく「日本代表」であり、その試合は日本中が固唾を飲んで見守る「国際試合」でした。

小学生の頃、スポーツの話をしていたある先生が「ボクシングは暴力に見えるから好きじゃない。だから、具志堅用高もよく知らない」と語っていました。

そうです。あの時代、ボクシングを見ない人でも、具志堅用高を当たり前に知っていたのです。

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具志堅と同じジュニアフライ級で、歴史的な名勝負を演じた寺地拳四朗と京口紘人。あるいは来月行われる井上尚弥vsポールバトラーの4団体時代初の完全統一戦。そして、4団体時代初の2階級にまたがる統一戦となる井岡一翔vsジョシュア・フランコ。

4団体時代の世界王者たちから、日本代表や国際試合の香りが限りなく薄くなってしまったのは、どうしてなのでしょうか?

ほとんどの選手が常にホームで戦う、ボクシングの〝世界〟に、私たちは辟易したのかもしれません。

サッカーや野球のメジャー競技で本物の〝世界〟を見てしまったから、かもしれません。

サッカーや野球と違い、欧米でのボクシングはメジャー競技ではありません。

欧米では井上尚弥らの軽量級は、コアなマニアと専門メディア限定の〝地下競技〟です。

そんなことは百も承知でしたが、ESPNが井上のアラン・ディパエン戦を一文字も記事にしなかったことには、かなりショックを受けました。

もちろん、井上尚弥も井岡一翔も寺地拳四朗らも「世界で認められているボクサー」です。

しかし、それは専門家評価という意味で、米国リングで高い需要のある人気選手か?と問われたら、笑って否定するしかありません。

ボクシング軽量級にもラスベガスやニューヨークでメガファイトが存在するーーー野球やサッカーで海外の華やかな舞台で活躍する日本人を見てしまうと、そう信じたい気持ちもわかります。

しかし、残念ながら軽量級にそんなメガファイトは存在しないのです。

…だからといって、嘘はいけません。

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具志堅用高の時代。

「具志堅が英国ボクシングニューズ誌で高く評価された」なんて逆輸入情報など、当時はどうでもいいことでした。

野茂英雄も中田英寿もいなかった時代です。「米国や欧州の華やかな舞台に無意味に恋焦がれる」こともありませんでした。

プロボクシングの世界戦は、国内で健康的に完結していたのです。

もちろん、具志堅用高の時代が、清廉潔白だったわけではありません。

なにしろ、あの文春砲の原点が「毒入りオレンジ事件」でした。

そして、BoxRecが整備された現代では極めて難しいことですが、当時は対戦する海外選手の戦績を捏造することも当たり前に横行していました。

〈つづく〉