豊穣な歴史を紡いできたスポーツには、多くの伝説が宝石のように散りばめられています。

野球は、環太平洋の一部の国でしかメジャーではなく、地球的視点からはマイナースポーツです。

しかし、日本と米国にとっての野球は特別なスポーツです。

NPBとMLBの優勝チームが真の世界一を決める、リアル・ワールドシリーズの実現を目指して立ち上がった日本のプロ野球は、100年近くも米国の背中を追い続けてきました。

米国で米国都合のルール改正があったとしても、それをすぐに取り入れるのは、来るべき決戦の日を見据えてのことです。

米国を見上げて芽吹いたプロボクシングも、よく似た感情を孕んでいました。

アジア、太平洋に橋頭堡を築いて、米国に挑戦するーーーもしかしたら、打倒・米国の思いは野球よりも強烈だったのかもしれません。

しかし、野球がMLB挑戦に長らく逡巡していたように、ボクシングもまた米国の中枢、ヘビー級やミドル級に攻め込むことに目を瞑り、フライ級やバンタム級に引きこもり続けているのです。

偉大な伝説が語り継がれ、野茂英雄という伝道師が太平洋に橋を架けた野球に対して、ボクシングは伝説を振り返ることなく、米国への挑戦も欺瞞の形でごまかし続けてきました。

それは、「長谷川穂積」や「西岡利晃」「井上尚弥」らで曝け出した帝拳イズム(大橋秀行らも含めて)だけの責任ではありません。

語り継ぐべき偉大な伝説が、現代のボクサーを抱擁しようとしない、その狭心な姿勢にも、その問題があります。

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この国のボクシングにおける〝王貞治〟や〝長嶋茂雄〟はファイティング原田です。

しかし、原田はその役割を十分に果たしてくれているでしょうか?

リング誌をはじめ欧米のメディアが日本最高のボクサーと一致して認めるレジェンド。

マイク・タイソンがアポ無しで訪れた原田をホテル・ニューオータニの貸し切りフロアに招き入れたのは、有名なエピソードです。

寝室には原田のブロマイドが貼ってあったと伝えられています。

あのとき原田でなく、具志堅用高ならタイソンは「誰だ?」と、他の取材陣同様に門前払いになっていたでしょう。



そんな、日本最高の伝説が、薬師寺保栄から「原田さんの防衛回数に並びましたよ」と冗談めかして話しかけられると、「お前らのタイトルと一緒にするな!」と一喝されたそうです。

メディアの質問に同じように答える原田を見て、薬師寺も「1団体で8階級(実際は10階級)の時代と今が違うのは分かってるけど、あんな言い方されると、ね」と、渡辺二郎との対談で苦笑いしていました。

昨日、村上宗隆の55号アーチに王はすぐに祝福のコメントを出しました。それも「私よりも村上君の方が難しい時代だ」と。

もちろん、イチローらからも絶大な尊敬を集め続ける王と、完全に忘れ去られた原田では心のヒネクレ方も違うのかもしれませんが…。