最も分かりやすいFighter of the year からおさらいです。

Fighter of the year はサッカーでいうパロンドール、つまり年間最高選手賞。

「その年に最も目覚ましい活躍をしたファイター」に贈られる賞です。

では「目覚ましい活躍」とは何なのか?

最近5年間の受賞者から見てみましょう。

左が全米ボクシング記者協会(BWAA)/右がリング誌のFighter of the year です。


【2017年】

ワシル・ロマチェンコ/ワシル・ロマチェンコ
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▶︎何が評価されたか▶︎▶︎▶︎前年11月のニコラス・ウォータースから、この年はジェイソン・ソーサ、ミゲール・マリアガ、ギレルモ・リゴンドーと戦い3戦全勝、全ストップ勝ち。

いずれも、肉体的には大きなダメージを与えなくても、絶望的な技術差を見せつけて相手の心をヘシ折る〝ノー・モア・チェンコ〟勝ち。

リゴンドー戦では、まだプロ10戦目。アマチュア史上最高のボクサーが、プロのリングで失神KOよりも衝撃的な勝ち方があることを見せつけました。



【2018年】

オレクサンダー・ウシク/オレクサンダー・ウシク
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▶︎何が評価されたか▶︎▶︎▶︎ウクライナ人が2連覇!WBSSのファーストシーズンで優勝、イベンダー・ホリフィールド以来、クルーザー級史上二人目、4団体時代では初のUndisputed Championに就きました。

〝クルーザー級のロマチェンコ〟は、本家が跳ね返された階級の壁を、のちに易々と突き破る大勝負を魅せてくれることになります。

バルト3国など欧州のボクシング市場も刺激しましたが、WBSSの路線は米国で人気ない階級を狙い撃ちにしたため、ファーストシーズンは米国で放送がありませんでした。



【2019年】

カネロ・アルバレス/カネロ・アルバレス

この年は、ミドル級の強豪ダニエル・ジェイコブスとのクロスゲームを制し、ライトヘビー級でかつて絶対王政を敷いていたセルゲイ・コバレフを追いかけまわしてノックアウト。

「強豪とはいえジェイコブスとどっこい」「借金苦と前日計量のリバウンド制限の二重苦のコバレフ」…まともなボクシングファンは、ラスベガスから立ち昇る腐臭に鼻をつまみました。



【2020年】
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テオフィモ・ロペス/テオフィモ・ロペス&タイソン・フューリー

▶︎何が評価されたか▶︎▶︎▶︎リング誌はロペスとフューリーがW受賞。

ロペスは、パンデミックの最中とはいえ、ロマチェンコを大番狂わせで下した1試合だけ。ロマチェンコは肩の古傷が悪化していたから負けました。

人気はあるロペスですが、フィジカルは中谷正義の方がずっと上で、技術的にもどっこい。あの日のロマなら、今頃は中谷がFighter of the yearに輝いていたかもしれません。

。。。。。泥酔してると、我ながら好き嫌いがはっきり出るわい!



【2021年】

カネロ・アルバレス/
カネロ・アルバレス

昨年のカネロは文句無し。以上。

。。。。。泥酔してると、我ながら好き嫌いがはっきり出るわい!


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メディアによって、評価が分かれるFighter of the yearももちろんあります。

2012年のFighter of the year はBWAAがノニト・ドネア、リング誌はファン・マヌエル・マルケスでした。

ドネアはこの年4試合を戦い、フライ級〜バンタム級〜ジュニアフェザー級の3階級を制覇(世界的にはジュニアバンタム級のタイトルは獲ったと認められていませんので、今でも4階級制覇です)。

バンタム級時代までの破壊的な強さは影を潜めたドネアは、一部の専門家から明らかな劣化も指摘されていましたが、多くのファンやメディアの目には、その蜃気楼がまだ見えていました。

一方のマルケスが2012年にリングに上がったのは、2度だけ。そのうち1試合はセルゲイ・フェドチェンコ相手のWBOジュニアウェルター級王者決定戦。Fighter of the year にはなんの効力もない一戦でしたが、もう1試合が歴史的に残る名勝負だったのです。

「2012年のFighter of the year。BWAAがドネアで、リング誌がマルケス」。

そう問いかけられて、軽量級に明るい日本のボクシングファンでもドネアのFighter of the year については「なんで獲ったんだっけ?」という人もいるかもしれません。
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しかし、マルケスのFighter of the year と聞けば「マニー・パッキャオを失神KOしたからだ!」とすぐに思い当たるでしょう。

BWAAは人気階級におもねることなく、軽量級のドネアの4試合を「目覚ましい活躍」と評価しました。

一方のリング誌は、世界中のボクシングファンを戦慄させたマルケスのカウンターを「目覚ましい活躍」と見たのです。

もし、リング誌的な視点からFighter of the year が選ばれてしまうと、欧米での関心が低い軽量級ボクサーに光が当てられるチャンスは益々少なくなってしまいます。

そもそもの注目度が低く、欧米で関心が薄い軽量級ボクサーには「目覚ましい活躍」など不可能ということになるのです。

PFPに2年も君臨しながらFighter of the year には一度も選ばれなかったローマン・ゴンサレスや、日本ではマニアがあれほど評価し、世界的にもリング誌PFP1位に立った井上尚弥が米国や英国市場でまともな需要が無いという悲劇は全てここに起因しています。

もし、100万ドルの報酬に一度も手が届かないチョコラティトが軽量級ではなくヘビー級で、タイソン・フューリーやアンソニー・ジョシュア、デオンティ・ワイルダーを圧倒していたなら、100万ドルどころか1億ドル稼いでForbesのアスリート長者番付に名前を刻んでいたかもしれません。

欧米は軽量級を嫌って無視しているというか、もっと最悪で視界にも入っていないのです。

しかし、しかし…日本でも、軽量級を蔑視しているなんてことはないでしょうか?

あってはいけないことですが…。

井上もバンタム級ではなくミドル級周辺の人気階級で同じことをやっていたなら、つまりエロール・スペンスやテレンス・クロフォード、カネロ・アルバレス、ゲンナジー・ゴロフキンを倒しまくっていたら、大坂なおみや錦織圭に後塵を浴びせてForbesのトップをメッシやフェデラーと争っていたかもしれません。

そして、日本でも「バロンドールと同じ〜」なんてマヌケな評価ではなく、正真正銘、本物の尊敬が集まっていたでしょう。
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もし、村田諒太の五輪金がミドル級ではなくバンタム級だったなら、電通がプロジェクトチームを立ち上げることは100%あり得ませんでした。

「Fighter of the year」と「PFP」、そして「IBHOF=International Boxing Hall of Fame=国際ボクシング名誉の殿堂」。

この三つは評価基準が違います。

その最大の違いは評価の対象となる「時間」です。

PFPはそれこそ「1試合」で順位が変わります。

Fighter of the yearは文字通り「1年間」。

そして、IBHOFは「キャリア全体」です。

PFFが過大評価を誘発しやすくてダメみたいな気もしてきますが、Fighter of the yearとIBHOFは、米国の人気階級に偏りがちですが、PFPは人気のない軽量級選手にも門戸を開いています。

まだまだ、続きます。。。。