井上尚弥vsノニト・ドネアのリマッチ。
井上はドネアに勝てば、WBO王者のポール・バトラー戦に進みUndisputed champion(完全統一王者)への意欲を示していますが、バトラー陣営との交渉がもつれるようなら、ジュニアフェザーに上げることを示唆しています。
ドネアもバンタム級でのUndisputed championを目指す意向ですが、ジュニアバンタムに下げる可能性も語っています。井上とは逆のベクトル、ジュニアバンタム級へ落とす可能性もほのめかしているのです。
井上がジュニアフェザーを目指すのは、減量苦も一因です。
108ポンドのジュニアライト級で最初の世界王者になったのは、一つでも多くの複数階級制覇をすることを意識しての無理やりの減量でした。
それにしても、10ポンド上のバンタム進出時には「減量苦から解放された」と語っていたのに、どうしてまた減量が苦しくなるのでしょうか?
成長期の少年ならわかりますが、そうではありません。
「年齢を重ねると新陳代謝が落ちるから」というのは一つの原因かもしれませんが、それではもっと大きな原因を見落としています。
「若いボクサーの新陳代謝が落ちる原因で加齢は些末なこと。長らく減量を強いられ続けた肉体は、脂肪や水分を吐き出さないように溜め込むようになる。回復時間が多い前日計量システムは、選手により過酷な減量を強いるようになってしまった」(VADA創始者マーガレット・グッドマン)。
グッドマンはネバダ州アスレティック・コミッションでリングドクターをつとめていた頃から「Boxers should fight where they're comfortable instead of killing themselves to make weight.(ボクサーは、より強く戦える階級で戦うべきで、より弱い階級を求めて自分を殺すような減量はしてはならない)」と再三警鐘を鳴らしてきました。
ヘビー級のようにスピードを上げるための減量と、井上に代表される多くの軽量級選手の減量は全く意味が違います。
ヘビー級やマニー・パッキャオは対戦相手や戦略に合わせて体重をデザインしますが、井上らは階級リミットに落とすためだけの過酷な減量に自らを投じているのです。
パッキャオは、まさにより大きなカネと名誉が得られる階級、ツワモノひしめくウェルター級で戦うために、1日8食、8000kcalを摂取して増量しました。
あるいは、アマチュアで75㎏=ミドル級で戦っていた村田諒太がプロでスーパーミドル級(168ポンド=76.20㎏)ではなく、迷わずミドル級(プロでは160ポンド=約72.57㎏)を選んだのは、より弱い相手と戦うためではなく、強豪が間断なく出現する人気階級への挑戦を望んだからでしょう。
前日計量から試合当日の体重で、118ポンドの井上の方が160ポンドの村田よりも大きくリバウンドしているのは、いかに過酷な減量だったのかを示す一つの指標です。
より弱い相手を求めて、より層が薄い階級へと無理な減量をすることが、健康に良いわけがありません。スポーツ医学の世界でも、ボクシング軽量級の減量が危険であることはずっと指摘されてきました。
井上尚弥も118ポンドで戦うよりも、126ポンド(フェザー級)や130ポンド(ジュニアライト級)で戦う方が絶対的に強いのは間違いありません。
しかし、スポーツの世界は常に相対評価、相対の勝負です。
軽量級ボクサーが過酷な減量に耐えるのは「みんながそうしているから」です。
より弱い相手を求めて下の階級リミットに肉体を削ることをしないで、絶対的な強さを求めてしまうと…より弱い相手を求めて肉体を削った餓えた大きな狼の群れに飛び込むことになります。
減量とは畢竟、より弱い相手と戦うために自分を弱体化させる行為に他なりません。「より弱い相手」と「自分も弱体化」の究極のバランスを求めるのが減量です。
井上やファイティング原田のように「過酷な減量」を軽々しく口にするのは、輪島功一や渡辺二郎が避難するように「どうして減量してるのか(より弱い相手と戦うため)を考えたら、減量がキツイなんて言うのは恥ずかしい」というのは筋が通っています。
そして、かつては井上と同様に過酷な減量と格闘していたドネアは「前日計量からのリバウンドがない」という信じられないほどナチュラルな体重コントロールを、妻レイチェルによる食事改善と、〝ドーピング・グル〟ビクター・コンテの処方箋によって習得しています。
減量が苦しくジュニアフェザーに上げることも考える井上と、ジュニアバンタムにも楽に下げることができると豪語するドネア。
二人が交錯するのはこの再戦が最後になるでしょう。
25日(水)の報道ステーションで内田篤人との対談がオンエアされた井上尚弥は「(リミットまで)8㎏以上」と、これから地獄の減量が始まると苦笑いしていました。
当日収録したとしたらもう12日前です。常人の肉体からでも12日で8㎏以上のダイエットは狂気の沙汰ですが、井上は激しい練習をこなしながらの残り8㎏以上。
実際にはインタビューを受ける余裕などない12日前ではなく、3〜4週間前でしょうが、それでも過酷な減量に変わりはありません。
内田の「あと8㎏くらいですか?」の質問に笑って答えての「いやいや8㎏以上」ですから、実際には10㎏近いのかもしれません。
29歳と39歳、減量苦と減量楽。
非常に対照的な二人のパンチャーが激突するまで、あと12日に迫りました。
井上はドネアに勝てば、WBO王者のポール・バトラー戦に進みUndisputed champion(完全統一王者)への意欲を示していますが、バトラー陣営との交渉がもつれるようなら、ジュニアフェザーに上げることを示唆しています。
ドネアもバンタム級でのUndisputed championを目指す意向ですが、ジュニアバンタムに下げる可能性も語っています。井上とは逆のベクトル、ジュニアバンタム級へ落とす可能性もほのめかしているのです。
井上がジュニアフェザーを目指すのは、減量苦も一因です。
108ポンドのジュニアライト級で最初の世界王者になったのは、一つでも多くの複数階級制覇をすることを意識しての無理やりの減量でした。
それにしても、10ポンド上のバンタム進出時には「減量苦から解放された」と語っていたのに、どうしてまた減量が苦しくなるのでしょうか?
成長期の少年ならわかりますが、そうではありません。
「年齢を重ねると新陳代謝が落ちるから」というのは一つの原因かもしれませんが、それではもっと大きな原因を見落としています。
「若いボクサーの新陳代謝が落ちる原因で加齢は些末なこと。長らく減量を強いられ続けた肉体は、脂肪や水分を吐き出さないように溜め込むようになる。回復時間が多い前日計量システムは、選手により過酷な減量を強いるようになってしまった」(VADA創始者マーガレット・グッドマン)。
グッドマンはネバダ州アスレティック・コミッションでリングドクターをつとめていた頃から「Boxers should fight where they're comfortable instead of killing themselves to make weight.(ボクサーは、より強く戦える階級で戦うべきで、より弱い階級を求めて自分を殺すような減量はしてはならない)」と再三警鐘を鳴らしてきました。
ヘビー級のようにスピードを上げるための減量と、井上に代表される多くの軽量級選手の減量は全く意味が違います。
ヘビー級やマニー・パッキャオは対戦相手や戦略に合わせて体重をデザインしますが、井上らは階級リミットに落とすためだけの過酷な減量に自らを投じているのです。
パッキャオは、まさにより大きなカネと名誉が得られる階級、ツワモノひしめくウェルター級で戦うために、1日8食、8000kcalを摂取して増量しました。
あるいは、アマチュアで75㎏=ミドル級で戦っていた村田諒太がプロでスーパーミドル級(168ポンド=76.20㎏)ではなく、迷わずミドル級(プロでは160ポンド=約72.57㎏)を選んだのは、より弱い相手と戦うためではなく、強豪が間断なく出現する人気階級への挑戦を望んだからでしょう。
前日計量から試合当日の体重で、118ポンドの井上の方が160ポンドの村田よりも大きくリバウンドしているのは、いかに過酷な減量だったのかを示す一つの指標です。
より弱い相手を求めて、より層が薄い階級へと無理な減量をすることが、健康に良いわけがありません。スポーツ医学の世界でも、ボクシング軽量級の減量が危険であることはずっと指摘されてきました。
井上尚弥も118ポンドで戦うよりも、126ポンド(フェザー級)や130ポンド(ジュニアライト級)で戦う方が絶対的に強いのは間違いありません。
しかし、スポーツの世界は常に相対評価、相対の勝負です。
軽量級ボクサーが過酷な減量に耐えるのは「みんながそうしているから」です。
より弱い相手を求めて下の階級リミットに肉体を削ることをしないで、絶対的な強さを求めてしまうと…より弱い相手を求めて肉体を削った餓えた大きな狼の群れに飛び込むことになります。
減量とは畢竟、より弱い相手と戦うために自分を弱体化させる行為に他なりません。「より弱い相手」と「自分も弱体化」の究極のバランスを求めるのが減量です。
井上やファイティング原田のように「過酷な減量」を軽々しく口にするのは、輪島功一や渡辺二郎が避難するように「どうして減量してるのか(より弱い相手と戦うため)を考えたら、減量がキツイなんて言うのは恥ずかしい」というのは筋が通っています。
そして、かつては井上と同様に過酷な減量と格闘していたドネアは「前日計量からのリバウンドがない」という信じられないほどナチュラルな体重コントロールを、妻レイチェルによる食事改善と、〝ドーピング・グル〟ビクター・コンテの処方箋によって習得しています。
減量が苦しくジュニアフェザーに上げることも考える井上と、ジュニアバンタムにも楽に下げることができると豪語するドネア。
二人が交錯するのはこの再戦が最後になるでしょう。
25日(水)の報道ステーションで内田篤人との対談がオンエアされた井上尚弥は「(リミットまで)8㎏以上」と、これから地獄の減量が始まると苦笑いしていました。
当日収録したとしたらもう12日前です。常人の肉体からでも12日で8㎏以上のダイエットは狂気の沙汰ですが、井上は激しい練習をこなしながらの残り8㎏以上。
実際にはインタビューを受ける余裕などない12日前ではなく、3〜4週間前でしょうが、それでも過酷な減量に変わりはありません。
内田の「あと8㎏くらいですか?」の質問に笑って答えての「いやいや8㎏以上」ですから、実際には10㎏近いのかもしれません。
29歳と39歳、減量苦と減量楽。
非常に対照的な二人のパンチャーが激突するまで、あと12日に迫りました。

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