近年、格闘技の減量で主流となっているのが「水抜き」です。

試合に向けて食事量を減らしながら、試合直前で水絶ち、サウナなどで体重を一気に落とすのが「水抜き」です。

人間の体は約60%が水分。抜くのは体重の5%。これは立ちくらみや強い喉の渇きなど脱水症状を引き起こすラインです。

水抜きは生存のために必要な水を体から抜くということですから、ダイエットなどに応用できるものではなく、前日計量というシステムも利用した、正確には減量ではなく、一時的に極端な脱水症状を起こして体重激減を図る、非常に危険な行為です。

ジョンリール・カシメロを失格とした英国ボクシング管理員会(BBBofC)のルールは、危険な水抜きとセットになっているサウナを排除する目的で近年発行されたものです。

基本的に減量の必要のないヘビー級選手が、スピードを重視する戦略でウェイトを軽く仕上げる場合は、当たり前ですが水抜きなどはしません。

計量後に十分な水分や食事を補充して、大きくリバウンドさせるのも水抜きの大きな特徴です。

効果的なリバウンドを行うには、当日計量では時間的に難しく、試合直前に一気に落とす水抜きは前日計量あっての減量法です。

誤解を恐れずにいうと、前日計量のときだけ規定の体重に落とし、計量前日はリミットよりも3㎏近くも重く、試合当日はバンタム級でも井上のように5㎏前後もリバンドする選手も珍しくありません。

水分量が落ちている時間を出来るだけ短くすることには、肉体的・精神的な負担を減らす効果もあります。
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当たり前の話ですが「5%ライン」は階級によって変わってきます。ストロー級の重岡銀次朗とミドル級の村田諒太では、水抜きする量は大きく異なります。

ストロー級なら47.62㎏*0.05=2.38㎏、ミドル級なら72.57㎏*0.05=3.63㎏。よく「水抜きは3㎏」と言われますが、大間違いです。

水抜きは試合7日〜10日から準備、水分は自由に飲む、というよりも多めに摂るのが基本です。体内に十分な水分が充填された状態を作るのです。

そして、試合3〜5日前からは塩分を減らして水抜きしやすい状態を整えます。塩分は水を体外に出さないような生理が働くのですが、十分な水分を摂ると塩分が欲しくなるのものです。

ちなみに、アルコールも水を体外に出さない生理が働きますから、特に試合前の飲酒は安全面はもちろん、減量においても厳禁。

そして、水抜きの大前提は体内に十分な水分が充填されていることです。体調不良などで体重の60%を割り込んでいる状態では、5%も水は抜けません。

体重超過の原因は、この水抜き失敗によるケースも多いと見られています。

世界タイトルの価値が暴落していることだけでなく、この計量直前に一気に体重を落とす水抜きも、体重超過の一因なのです。

格闘技団体によっては水抜きを禁止している団体もあります。水抜きしたかどうかの判断は前日計量までに段階的な計量を実施することで「水抜きなしでは落とせないリミット」を設けることや、ドクターチェックがあります。

こうした団体やBBBofCは「水抜き」をピンポイントで禁止しているというよりも、危険な脱水症状を伴う減量を禁止しているのです。

この流れがJBCにも波及する可能性は十分にあります。

それにしても。

安全が最優先されるのは当然とはいえ、ルールの変更は選手が可哀想に思えてきます。