この試合が何故「日本ボクシング史上最大」と形容されるのか?

単純な日本国民の関心度だけなら、1960年代のボクシング黄金時代に躍動したファイティング原田や、21世紀になってからでも亀田一家の方が遥かに上でしょう。

また、人気階級のビッグネーム、ゲンナジー・ゴロフキンと日本人が戦うという構図なら、すでに淵上誠と石田順裕がGGGに挑戦しています。
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…明後日のメガファイトは、ドメスティックな関心に限定される原田や亀田のフライ級やバンタム級の試合ではありません。

また、人気階級の強豪王者とはいえ米国では大きな注目を集めるに至らないカザフスタン人が対戦相手に困って〝僻地〟※に呼んだ日本人とも違います。

※ウクライナ・キーウ州ブロバルウィー、モナコ公国を〝僻地〟と呼ぶのは、あくまで〝ボクシング用語〟の中です。

この試合は「米国の人気階級の強豪王者を日本に呼ぶ」という点で、すでにあちこちで比較されているように、バブル期の1988年と1990年にマイク・タイソンを東京ドームに招聘したイベントと相似します。

しかし、今回は「.日本人が〝タイソン〟と戦う」という一点において、30年以上前の〝バブルのお祭り〟とは全く違う価値を持っているのです。

商業的なインパクトが淵上や石田はもちろん、原田も亀田さえも遥かに凌駕しているばかりか、その舞台に上がる最低限の条件をクリアした日本人が存在してくれたからこそ実現したのが「日本史上最大の戦い」なのです。

10年前。日本が初めて手にした、人気階級での五輪金メダリストを、電通が音頭をとって多くの企業からスポンサーを募って神輿に担ぎ上げました。

このプロジェクトチームの最終目標は、世界ミドル級のメジャーな王者に挑戦するまで、です。

それは、世界初挑戦時に交渉されたビリー・ジョー・サンダースでも、実際に挑戦したアッサン・エンダムでもありません。

また、ジャモール・チャーロやデメトリアス・アンドラーデのような、人気階級の地味な王者でもありません。

具体的には、圧倒的なKO勝利を重ねてPFPキングに登り詰めたゲンナジー・ゴロフキンか、現在のボクシングシーンで人気の頂点に立つカネロ・アルバレスです。
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陣営はこの2人と並行に交渉を進め、2020年にはカネロと「12月に東京ドーム」が成立寸前に迫り、カネロも日本での村田戦への興味を口にします。

プロジェクトチームが目指したのは、正真正銘の人気階級に、然るべき日本代表をぶつけることでした。

人気階級での然るべき日本代表…。そんな夢みたいな日本人が。2012年のロンドンに出現したのです。

帝拳と電通はヒト・モノ・カネ、あらゆる投資を惜しまず、ついに神輿を約束の場所まで運び込みました。

プロジェクトチームは、最終目標に辿り着きました。

ただでさえ、至難の事業に、パンデミックまで重なる不運に見舞われながらも目標を完徹した、そのご尽力とご苦労には、一ボクシングファンとして、尊敬と感謝しかありません。

今の時点で、彼らと、私たちボクシングファンは既に勝利を手にしました。

しかし、彼らの、いいえ私たち日本のボクシングファンの夢は、この最終目標の先にあります。

帝拳がどんなに強力なネットワークを持つプロモーターでも、電通が世界屈指の広告代理店でも、ここから先は指一本手出しは出来ません。

あとは、日本ボクシング史上最強ボクサーの二つの拳に全てを委ねるしかありません。

私たちが願いを賭けた160パウンダーの日本人が、神輿を降りてその舞台に上がるまで、あと2日になりました。