村田諒太とゲンナジー・ゴロフキンをペーパー上で審査すると、アマチュア時代に五輪で獲得したメダルの色だけで村田が上回っているものの、プロでの実績には雲泥の差があります。

世界戦での成績を並べても村田は6戦4勝4KO2敗、GGGは 25戦23勝20KO1敗1分。

GGGが勝てなかった2試合(1敗1分)は、現在PFPキングに君臨するカネロ・アルバレスとのいずれも議論を呼ぶクロスゲームでした。

GGGのプロ43戦(41勝36KO)のキャリアを振り返ると、一つのターニングポイントがあることに気付きます。

2016年9月10日のケル・ブルック戦です。

ウェルター級から二階級上げてきたブルックのスピードに戸惑いながらも、5ラウンドで英国人の野望を破壊しました。

とはいえ、小さく非力なブルックに4ラウンドまでポイントでリードを許した姿からは、反応の鈍化がはっきり感じ取れました。

翌2017年3月18日のダニエル・ジェイコブス戦は、それまで強豪が対戦を回避して来たこともあり、GGGはどれだけ強いのか?を測るテストマッチとなります。

ジェイコブスが意図的に体重超過を犯すハンデはあったとはいえ、第4ラウンドにダウンを奪った後のGGGは大きなジェイコブスのパワーを持て余し、尻すぼみの判定決着に持ち込まれてしまいます。

ウィルフレド・ゴメスと並んでいた連続KO防衛の記録も、17でストップ。この試合で〝魔法のガウン〟は、確かにはだけました。

ブルックのスピード、ジェイコブスのパワーに綻びを見せたGGGは34歳になっていました。

衰えが噴出する年齢ではありませんでしたが、弱い挑戦者を安易にノックアウトしてきたツケを支払うにはけして若くはない年齢です。

GGGの劣化を待っていたハイエナたちがにわかに色めき出します。
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そして「GGG、衰えたり」の診断書を確認したゴールデンボーイ・プロモーションズは、カネロ・アルバレスにGOサインを出します。

大方の見立てはGGGのストップ勝ちでしたが、この試合も判定に持ち込まれます。そして、勝利は動かないと思われた内容は、まさかの三者三様・スプリットドロー。

カネロを支持したアダレイド・バードはあろうことか118-110とスコア、大きな議論を巻き起こします。

翌2018年5月にはブランクの空いたジュニアミドル級、バーネス・マーティロシュヤンを2ラウンドで粉砕するも、9月のカネロ戦ではキャリア初のアウトボクシングを強いられ、2-0のマジョリティディジションで競り負けてしまいます。

「GGGは雑魚相手に派手に勝ってただけじゃないのか?」という疑問は、2019年10月にセルゲイ・デレビャンチェンコになんとか勝ちを拾った時点で、もはや疑問ではなくなりました。

もちろん強豪王者ですが、誰に勝ったのか?となると…。

そして、2020年に38歳になったGGGは、カミル・シュレメタを倒すのに7ラウンドを要してしまいます。

シュレメタがエマヌエル・ブランダムラやスティーブン・バトラーらと同じ、世界基準とはステージが違うリーグ所属のミドル級であることは、誰も否定できないでしょう。

ブルック戦からのGGGは8戦6勝4KO1敗1分。KO出来たのはブルック、マーティロシュヤン、スティーブ・ロールス、シュメルタといったミドル級の〝マイナーリーガー〟です。

村田の世界戦4勝4KO2敗は、現時点のGGGとの比較では悲観するものではありません。

もちろん、村田はカネロと24ラウンド戦っていませんが、ゴロフキンはかつてのゴロフキンではありません。

今のGGGはアルファベット団体御用達の世界ランカーはKO出来ても、リング誌やESPNなどに名前を連ねるまともな世界ランカー相手では苦戦する…そう考えるのが自然です。

下り坂を迎えたキャリアで、GGGが迎えるのは、階級最強の1人ではないかもしれませんが、階級屈指の強打者で、マイナーリーガーとは違う村田諒太です。

そして、この試合は村田がプロ転向したときから目指していた、日本ボクシング界の夢です。

ゴロフキン陣営がこの試合が簡単ではないこと、万が一でも落とすようなことがあると、9月17日のカネロ戦が御破算になることを十分に理解しているはずです。

ゴロフキンもまた、油断のならない大勝負だと覚悟して仕上げてくるのは間違いありません。

日本史上最大の勝負まで、あと3日!