承認団体が乱立する現代、世界王者はそれこそ掃いて捨てるほどいます。

アルファベットタイトルはWBA〜WBOを主要4団体とみなされ、欧州ではIBOも第5の団体として一定の地位を確立しています。

WBCやIBF、WBOが「Major=主要」と認められて、IBOがそうではない理由は明確ではありません。

Majorになるには、人気階級の王者にビッグネームを取り込むことが近道です。

そして、くだらないことですが最初の母体WBAから分離独立したという〝血統書〟もMajorとして受け入れられるには条件になるのかもしれません。

とはいえ、例えばRIZINなどが大きな力を持ってボクシングに参入、ビッグネームを次々に傘下に収めると〝血統書〟などなくともMajorに数えざるを得ないでしょう。
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また、アルファベット団体とは別にリング誌も独自ランキングとチャンピオンシップ制度を確立しています。

ランキングや王者の面子を見れば一目瞭然ですが、リング誌はアルファベットよりも認定基準が厳格。王者の品格は、リング誌がアルファベットを凌駕しています。

もちろん、リング誌王者は、アルファベット4団体のいずれかのベルトを持っていることがほとんどで〝アルファベット手ぶら〟は極めてレアなケースです。

それでも、過去にはマイケル・スピンクス、最近ではタイソン・フューリーが〝手ぶら〟のリング誌王者でした。(この2人はLineal Championでもありました)。

米国では、アルファベット4団体にリング誌を加えた5つをMajorと数えるのが主流です。


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マニー・パッキャオは8階級制覇というのが世界認識ですが、日本のようにMajor4に凝り固まると6階級制覇という見方に陥ります。

日本が認めないフェザー級とジュニアウェルター級はいずれもリング誌王者とLineal Championで階級最強と見られていたマルコ・アントニオ・バレラとリッキー・ハットンを倒したもので、この2人を王者と認めないでアルファベットに固執するのは滑稽でしかありません。
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そして、Lineal Championです。

承認団体もベルトも無い Lineal Championという原理主義的な王座も存在するのです。

そのコンセプトはリング誌とよく似ています。

原理主義者たちの言い分は至って単純で「王者を倒したものだけが王者」。

もちろん、王者が引退したり、亡くなってしまうと決定戦が行われますが、そのマッチアップも厳格な〝最強対決〟が条件になるため、空位が長く続くこともあります。

例えば、現在のジュニアフェザー級の Lineal Champion は、信じられないでしょうが、ギレルモ・リゴンドー です。

バンタム級に落として2連敗中のリゴンドー ですが、ジュニアフェザー級では負けていません。

ジュニアフェザー級でLineal Championになるには、リゴンドー にジュニアフェザー級で勝つか、リゴンドー が引退するなどリングに上がれない絶対的事由があるときだけ組まれる決定戦にかつしかありません。

先日、事故で目に重傷を負ったリゴンドー のケースはどうなるのか、本人が引退宣言しなければ、いつまで王者のままなのか?…複雑です。

リング誌の場合は、王者が当該階級で一定期間試合を行わなければ、タイトル剥奪。ランキング1位と2位で決定戦が行われます。

とはいえ、リング誌のランキングは純粋に考えた最強ランキング、1位や2位はアルファベットの世界王者であることがほとんど。

つまり、決定戦は団体統一戦になり、いくつもの障害をクリアしないと実現しません。

前置きが長くなりましたが、ボクシングの世界王者には、権威がある順番にUndisputed Champion、Lineal Champion、リング誌王者、アルファベット王者とさまざまな王者が存在します。

そして、例外はあるものの、Undisputed ChampionはLineal Champion以下を包含するケースが多く、単体のアルファベット王者がUndisputed Champion であることは理論上ありえません。

Undisputed、Lineal はハードルが高く、この二つの基準では井上尚弥もテレンス・クロフォードもチャンピオンではありません。

ウェルター級はマニー・パッキャオ、バンタム級はベルナルド・ピニャンゴを最後に、Lineal Championは断然したまま。

特にバンタム級は、ピニャンゴが1987年2月にWBAタイトルを返上してから35年間も空位が続きているのです。

Undisputed Championに至っては、1972年のエンリケ・ピンダーで途絶えてから50年もの歳月が流れてしまいました。

バンタム級では半世紀以上もUndisputed Champion、議論する余地のない王者が誕生していないのです。

何という不毛。何という難産でしょうか。

Undisputed Championという概念の中で、バンタム級は半世紀以上も本物の世界王者が不在のまま、議論する余地のある世界王者が乱立してきたのです。

この不毛の半世紀にピリオドを打つ意味は小さくはないとはいえ、そこにこだわる必要性がどこまであるのか、は微妙です。

バンタム級に特別な相手がいない現状で、井上がこのクラスにとどまらずに、バンタム級よりは特別な相手がひしめくジュニアフェザー級に進出して欲しいと考えるファンも多いのではないでしょうか?

もちろん、Fighter of the year やPFPなど評価面ではいたずらに複数階級制覇を重ねるよりも、一点最強を証明する Undisputed Champion の方が高く見積もられます。

渡辺二郎が「世界王者が2人いるんはおかしいでしょ」とらUndisputed Championへの強烈な意欲を見せたとき、多くのファンはその価値を理解していませんでした。

すでに、マービン・ハグラーやマイケル・スピンクスの存在からUndisputed Championの凄みはわかっていたはずの日本のボクシングファンでも、それを具志堅用高や渡辺にも当てはまる発想はありませんでした。

のちに畑山隆則とフロイド・メイウェザーが同じジュニアライト級で対立王者になりますが、そのときも「最強を決めろ!」「プリティボーイを横浜アリーナに引っ張り込め!」なんて声はほとんど聞かれませんでした。

これは、当時のメイがまだマネーに孵化する前で、メガスターではなかったことよりも、団体統一戦の難しさをボクシングファンがよく知っていたからという事情もあるでしょう。

井上尚弥がバンタム級を完全統一した実績が評価されて、今年のFighter of the year に輝き、引退後3年で一発殿堂を果たして、私たちは「モンスターの選択は正しかった」と、そのときになってようやく気づくのかもしれません。