プロボクシングには世界的な統括団体がありませんから、ドーピング検査はローカルの統括団体の裁量と、選手間の契約に委ねられています。

大きな試合をいくつも手がけ資産も潤沢なネバダ州アスレティック・コミッションでは試合前後の検査を義務付けていますが、JBCのような貧困団体では試合の規模によって検査を行わないこともあります。

日本で有名な「山中慎介vsルイス・ネリ」のように、選手間の契約でVADAに検査を依頼するケースもあります。このとき、約150万円の検査費用を負担したのは帝拳、JBCにはその財力がありません。

ただ、いずれも試合が決定してから行われる検査です。

自身の潔白を積極的に証明したいと考えるスター選手は、WBCのクリーンプログラムなど、VADAの年間検査に登録しています。
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先日のオスカル・バルデスも、カネロ・アルバレスもWBCのクリーン・ボクシング・プログラムに登録・参加していながら陽性反応を起こしました。

「メキシコ・WBC・VADA」の近親関係を考えると、ありえないことが起きています。

第三者から見ると「義務でもないWBCのプログラムにどうして登録するのか?」「登録しながらVADAのザル検査にどうして引っかかるのか?」という純粋な疑問が湧いてきます。

杜撰なドーピングをしているのなら、WBCのクリーンプログラムに登録する意図がわかりません。

チーム・カネロの肩を持つ気は毛頭ありませんが、ロシアの五輪チームのような組織ぐるみのドーピングはしていないと思います。

カネロが本気でやったら、VADAの検査なんて簡単にすり抜けることが出来るはずです。

ただ、チーム・カネロに限らず、ボクシング界の禁止薬物への認識が異常に低いのは明らかです。

世界的な統括団体が存在しない、承認団体とプロモーターとテレビ局が私利私欲で興行に関わっていることの弊害です。

「バルデス」のケースも禁止物質に陽性反応を示した時点で、WBCが特別委員会を設置して試合の実施やライセンス剥奪について検討したといいますが、統括するアリゾナ州のパスクワ・ヤキ族・アスレティック・コミッションは早々に「試合決行」を発表。

この動きにトップランクもWBCも従いますが、どう考えてもこの3者はグルです。

世界的な統括団体・世界共通のルールブックが存在するスポーツなら、こんな強引な〝豪雨決行〟はありえません。
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Oscar Valdez's trainer, Eddy Reynoso, distances himself from doping talk, says 'not responsible' for nutrition

エディ・レイノソが「ドーピングなんてしていない、私は栄養管理については一切指導していない」と発言しました。

今月初めに行われたロブソン・コンセイサン戦で、禁止薬物フェンテルミンの陽性反応が出て、厳しい目を向けられたのはオスカー・バルデスだけではありません。

エディ・レイノソもデビン・ヘイニーやケイレブ・プラント、サニー・エドワーズといったチャンピオンたちからSNSを通して「組織ぐるみでドーピングしているのではないか」と疑惑の矛先が向けられました。

IBFスーパーミドル級王者プラントは、11月6日にカリフォルニア州ビバリーヒルズで行われたカネロ・アルバレス(アマチュア時代からレイノソの指導を受けている)との完全統一タイトルを賭けたのプロモーションの記者会見で「チーム・カネロは全員が疑わしい」と書き込んでいます。

44歳のレイノソは、先週、通訳を介してスペイン語でESPNに「今後どのボクサーをトレーニングするかを見直す」とし「私は彼らの栄養士ではなく、医学的なアドバイスもしない」という宣誓書に署名させることも検討していると語りました。

「私はトレーナーであり、技術を教えるだけです」。

「私は20年間ボクサーを教えて来て、15人の世界チャンピオンを育てた。プラントのような人たちは、私のキャリアや業績、ファイターたちとの役割を何も知らない。彼らは何も知らないくせに、根拠もなく私の名誉を汚そうとしているだけだ」。

ESPNとリング誌のPFPでNo.1評価を受けるカネロは、2018年のゲンナジー・ゴロフキンとの再戦前に、禁止薬物であるクレンブテロールに陽性反応を示し、6カ月の出場停止処分を受け、試合を延期しています。

彼は、この陽性反応は彼の出身地であるメキシコのグアダラハラで食べた汚染された牛肉に含まれていたものだと弁明。

その主張は、五輪選手から見るとお笑い種で、受け入れられるわけがありません。しかし、北米には別のルールが存在します。

NFLのドゥエイン・ブラウンは2015年にクレンブテロールの陽性反応が出ましたが、メキシコで食べた牛肉に由来する物質であることを証明し、10試合の出場停止処分が覆されました。

この事件を契機にNFLは選手たちに、メキシコや中国で肉を食べ過ぎると禁止薬物の陽性反応が出る可能性があると警告、次からはペナルティが科せられる可能性を選手に伝えています。

「故意でなければセーフ」。わけのわからないルールが米国のメジャースポーツでも通用することがあるのですから、マイナーのボクシングでは大手を振って歩く理屈になっています。

今回のバルデスも、陽性反応の原因をハーブティーにフェンテルミンが含まれていたためで「故意ではない」と主張。

レイノソは「私はトレーナー。技術を教え、選手が戦えるように準備するのが私の役割。残念なことに、メディアの中には私を陥れようとする人たちがいて、私に責任のないことで私を攻撃している」と、傘下の選手が禁止物質の陽性反応が相次いでいることと自身は関係がないと強調しました。

ESPNの2020年トレーナー・オブ・ザ・イヤーを受賞したレイノソは、アルバレスのサンディエゴのジムで、元ヘビー級チャンピオンのアンディ・ルイスJr.、ライアン・ガルシア、ヘビー級の新星フランク・サンチェス、WBCフライ級王者のフリオ・セサール・マルティネスも指導しています。

マルティネスは2019年に微量のクレンブテロールの陽性反応が出たとき、メキシコで食べた牛肉のせいだと主張、WBCはその弁明を受け入れました。

レイノソはトレーナー・オブ・ザ・イヤーの2年連続受賞を狙うポジションにいます。

スーパーミドル級のカネロは、2月にアヴニ・イルディリムを3ラウンドでKOし、5月にはIBF王者ビリー・ジョー・サンダースをTKOで下してタイトルを統一、完全統一に王手をかけています。

ガルシアは、1月にオリンピック金メダリストのルーク・キャンベルをKO、キャリア最高のパフォーマンスを披露。

そして、マルティネスは6月にジョエル・コルドバにストップ勝ちしてタイトルを守り、バルデスは2月にミゲル・ベルチェルトを倒して130ポンドのタイトルを獲得。

参加の選手が鮮やかな成果を挙げ続けているレイノソは の2年連続トレーナー・オブ・ザ・イヤーに向けて見晴らし良好でしたが…。

この陽性反応にもかかわらず、バルデスの試合が決強行されたことも、非難の声をさらに大きくした原因です。

レイノソは、バルデスの試合を許可すべきだと思うかという質問に対して「コミッションとWBCが試合を認定するなら、トレーナーである私は試合を進めるだけ。管轄したり承認するのは私の仕事ではない」と答えています。

ボクシング界のドーピングに、バルコスキャンダルのような巨悪の背景は存在していないでしょう。バルコの首謀者ビクター・コンテと長期契約を結び、堂々と「李下に冠を正している」ノニト・ドネアらは非常に怪しいと思いますが。

今回のバルデスのケースもWBCのクリーンボクシングプログラムに登録していなければ、何の問題もありませんでした。もっと言うと、統括団体のパスクワ・ヤキ族・アスレティック・コミッションのルールブックに抵触していないのなら、試合決行は当然です。

バルデスは「試合とは全く関係のないVADAが独自に決めた禁止物質が陽性反応を示した」のです。

VADA のマーガレット・グッドマンの言葉が全てです。

「私たちは検査機関。独自のやり方と禁止物質リストに基づいて検査誌、その結果を報告・発表をするだけの機関。試合を中止したり、選手からライセンスを剥奪するのは私たちの仕事ではないし、そんな権限もない」。

世界的な統括団体、ルールが存在しないということは、こういうことです。 

犯罪は、犯罪を定義する法律と、それを取り締まる警察があって初めて存在します。法律がなければ犯罪はありえません。  

バルデスのケースもパスクワ・ヤキ族・アスレティック・コミッションにその〝法律〟がなければ、何のお咎めもなくて当然です。

WBCクリーン・ボクシング・プログラムに入ってるから、話がややこしくなるのです。