「女性でも殴り合い好きな人がいるんだね。どうするのかな、嫁入り前のお嬢ちゃんが顔を殴り合って、こんな競技好きな人がいるんだ」。

金メダリストを侮辱する意図はなく、女子ボクシングに対する個人的な意見を吐露した張本勲。

リビングで家族と一緒にフェザー級決勝を見ていたおじいちゃんが眉を顰めるのなら、なんの問題もありません。

政治家の演説や大新聞の社説でもあるまいし、日曜朝のバラエティ番組で老いたレジェンドが時代や世間からズレた意見を堂々と言い放つのを、私は微笑ましいくらいに思っていました。

その最大の原因は、私が見ていた回に限っていたかもしれませんが、張本が舌鋒を向けるのはメジャーリーグや欧州サッカー、松井秀喜に松坂大輔、大谷翔平、カズら、自分より大きな存在に対してだったからです。

そこに透けて見えるのは、時代に置いてけぼりを食った昭和のプロ野球への幼い愛情と、拙い矜持です。

張本がどれほど過酷な時代を生きたか、その出自からどれほど苦労したか、そんな環境でどれほど偉大な業績を残したかなんて、プロ野球ファンなら誰だって分かっています。

あの年齢になっても、大きな存在に因縁をつけ、強いやつに噛み付くのは、個人的には全く気になりません。

しかし、今回は五輪金メダリストとはいえ、世間的にはこの五輪で初めて脚光を浴びた女子大生。

そして、その発言は才能豊かなフェザー級の美しいジャバーに向けただけでなく、女子ボクシング全体に対する配慮を欠いたものでした。

彼女も女子ボクシングも、強大なパワーハウスではありません。

そんな存在に向かって、吐き出す言葉としてはあまりにも〝彼女たち〟への尊敬が感じられませんでした。

残念です。



耄碌したか、張本勲さん。