欧米のボクシング市場には、階級間に明らかな〝貴賎〟が存在します。

日本では中量級やときには重量級として紹介されることもあるライト(軽量)級以下が、欧米の軽量級です。

ジュニアフェザー級以下はランキングは一気に薄くなり、ファンの関心は悲劇的に減少してしまいます。 

世界王者の数が今と比べるとはるかに抑制されていた2団体、3団体時代はヘビー級やミドル級の注目試合のようなメガファイトはないにしても、超軽量級でもそれなりの尊敬と存在感を維持していました。

しかし、4団体時代が深まると、様相は大きく変わります。

4団体時代は、単なる「+1」や、「×4」ではなく、様々な世界王者が承認される王者が大量生産される時代です。

承認団体は承認料の支払い実績と支払い能力のあるボクサーを優先して捏造的にランキング、他のスポーツではありえない世界戦が当たり前に繰り広げられています。

カネロ・アルバレスが小手先でひねったアブリ・イルディルムや、井上尚弥への挑戦が内定しているマイケル・ダスマリナスが指名挑戦者というのは、もはや〝犯罪〟です。

WBCやIBFのランキング委員も一人残らず「おかしいのはわかってる」はずです。犯罪です。
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「これが最も価値のある世界チャンピオンベルト」とメキシコベルトをお披露目する嬉しそうなマウリシオさん。

そして、世界王者が粗製乱造される現代、超軽量級の試合が大きなイベントでメインを張ることは絶対になく、前座に回されるのが常態化してしまいます。

このビジネススタイルが、ただでさえ軽量級に関心のない米国のカジュアルファンの心理に「超軽量級は安っぽい」というイメージを植え込み続け、その地位は下落する一方。

ボクシングがメジャースポーツだったという絶対的な背景があるとはいえ、オリジナル8の時代は「ウェルター級がメインイベントで前座に超軽量級の世界戦が複数ぶら下がってる」なんて興行はありえません、というかできません。

そんなことしたら、世界に8人しかいないチャンピオンを1晩で3人も4人もリングに上げてしまうことになります。世界戦を複数パックした興行なんて、馬鹿げています。

しかし、世界王者がいくらでもいる現代なら、一つの興行で複数の世界戦がパックされるのは当たり前、人気階級を目玉に超軽量級がオマケで付いてくる構図です。

米国市場において、超軽量級は日陰に隠された〝被差別クラス〟。ライト級でもタレントが揃わないと大きな注目を浴びることは出来ません。

ファン・フランシスコ・エストラーダのように「体が小さいということはボクサーにとって悲劇」「中量級との報酬格差は酷すぎる」と嘆いていても何も変わりません。人気がないんだから。

どうしたらそこから脱出できるのか?

この難問には、すでにマニー・パッキャオが満点回答を示してくれています。超軽量級で「報酬が少ない」と文句を言ってないで、報酬が高い階級で勝てばいいんです。

パッキャオは人種差別の激しい米国で、米国人やヒスパニックでなくてもスターダムに駆け上がる方法まで明確に提示してくれています。パッキャオのやり方を真似るだけで日本人でも中国人でも米国で大人気のスーパースターになれます。

「PFP8位なら世界で8番目に報酬が高くてもいいはず」なんて寝言です。過去のランキングを見ればわかるように、PFPは不人気階級にもスポットライトを当てる差別補正装置の役割もあります。


もちろん、この話は「黄金のバンタム」がまかり通る日本では全く関係ありません。


前置きが長くなりました。

日陰階級から陽の当たる場所へ。 

1年少し前までジュニアライト級で戦っていたガーボンタ・デービスが、6月26日にマリオ・バリオスを相手にジュニアウェルター級デビューを飾ります。

「ここがゴールと思っていない」。身長166㎝/リーチ171㎝のタンク・デービスが米国の花、ウェルター級を見据えているのは明らかです。

自堕落な26歳ですが、心意気は素晴らしい、これがファイターです。

バリオスはセカンド王者ながらWBAのストラップを握る25歳。

タンクとの無敗対決はSHOWTIMEがPPVで提供するビッグファイトになります。

ジュニアフェザー級でデビューしたバリオスですが身長178㎝、リーチ180㎝とデービスを大きく上回る骨格の持ち主。この階級で4年間戦って、完全な140パウンダーの肉体を作り上げています。

現在のジュニアウェルター級はジョシュ・テイラーがIBFとWBA、ホセ・ラミレスがWBCとWBOを分け合う、やはり無敗の〝2強〟体制。そして、この二人が5月22日に完全統一王座を賭けて激突するのです。

テイラーとラミレスがトップランク、タンク・デービスがPBCという障壁はありますが、フロイド・メイウェザーは秘蔵っ子の完全統一に乗り気です。

デービスもバリオスも無敗とはいえ、強豪との対戦はありません。

デービスはユリオルキス・ガンボア、レオ・サンタクルスに勝ってるとはいえ、この二人は「下のクラスから上がってきたピークを過ぎたビッグネーム」。それでも、苦戦する場面も見られました。

今のところ「弱い相手に豪快に勝ってきただけ」というのがタンクの中身です。

デービスが鮮やかに勝つのがファンも含めた〝米国の総意〟でしょうが、番狂わせもありえます。

体重超過も含めて、常に有利なウェイトで戦って作ってきたデービスの戦績が本物なのかどうか?

バリオスは格好のリトマス紙です。