「1980年代頃までプライバシーもなんもなかった」。

読者投稿で本名から住所、ときには電話番号までが記載されることが当たり前だった時代です。

そんなことを以前書いた気がしますが 、今夜は大橋秀行です。

ボクシングマガジン1986年3月号の「今月のボクサー」から。

昭和40年3月8日生まれの20歳(当時)、出身校、家族構成、日課、趣味など、プライベートに偏った内容です。

そして、実家や現在の住所が最後の番地まで載せられています…。

「小学生の頃、ずっと頭が良く数学が4か5ばかりでした」という大橋に、記者が「本当かね」と失礼に突っ込むくだりも。

▶︎小学生なら数学でなく算数じゃないのか…?


「中学の頃からグレて成績は下降一方」だったそうで「高校では143人中142番 。ビリの高野君は今も大親友で大工の仕事を休んで試合の応援に駆けつけてくれる」そうです。

趣味は「夕やけニャンニャンを見ることで、世界王者になったら、新田恵利に会えると信じてます」。


尊敬する人には、ライバルの喜友名朝博の名前も挙げています。「ぼくが喜友名のことをあれこれ言えば、必ず返してくる憎らしいやつ。この間、後楽園ホールで見かけて顔をそらしましたが、あいつはすぐに近寄ってきてコンニチワって挨拶してきました」。

▶︎このとき、大橋は4戦全勝3KOで、日本ジュニアフライ級3位。喜友名は15勝7KO1敗の日本王者。この二人の試合は、互いの個性がぶつかり合う良い試合でした。


勤務先は千代田区の新聞社で10時から14時まで。

「150年に一度の天才」と売り出されていることについては「悪い気はしませんが営業用ですね」と冷静。

しかし「自分は努力型ですが、好きな言葉は天才です」と見事に切り返しています。
 

▶︎ボクシングだけじゃなく、言葉のセンスも抜群です。
IMG_0696
*********

スター選手の〝孵化〟前のインタビュー記事は、微笑ましいものです。特に、長い時間が経って読み返してみると、なおさらです。

純白の野望は、狡猾で熟練の王者に引き裂かれますが、破られたピースをかき集めた大橋は!そこから本当の自分を作りあげてゆきました。



…昔の雑誌を取り出してページをめくると、元ボクサーが逮捕されたという記事もよく見かけます。

この類の記事は、微笑ましいわけがありません。

今では専門誌だけでなくネットニュースなどでもこの種のニュースが簡単に目に飛び込んできて「え!?」という戸惑いに悲しくなります。

彼らが道を誤った原因が、ボクサーという職業とは関係はないとはわかっていますが、それでも居た堪れない気持ちになります。



思い入れのあるボクサーの「純白の野望」と、「汚れた忸怩」のシリーズです。