順位付けは後回しにして、とりあえず思いつくままに「トーナメント」と「ラウンドロビン」をピックアップしていきます。

一発目は日本からも井上尚弥と井岡一翔がリングに上がった Super Fly 。

米国では歴史的に軽量級、特にジュニアフェザー級以下の〝超軽量級〟に興味が持たれることはまずありません。
 
Historically, American audiences have rarely been interested in fighters at lower weight classes.
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HBOのボクシング番組でのグレードはBとはいえ Boxing After Dark で全米生中継。

ジュニアバンタム級の試合を中心に組み立てた興行を打ったのは平時なら大冒険でした(スポンサー料と報酬が跳ね上がるグレードAは亀海喜寛らが出場経験のある HBO World Championship Boxing ) 。 

しかし、 第1回SuperFlyが開催された2017年はHBOボクシングにとって平時ではありませんでした。

米国ボクシング市場の衰退から、番組予算は年々縮小。ヘビー級やウェルター級の大興行を打つ余裕などありません。

さらに巨大興行になるとPPVという予算枠にとらわれない手法もありますが、これはスーパースターでないと成功が約束されない年数回が限度のレアでハレの興行。

断末魔のHBOにとって、総額わずか100万ドル!前後でイベントを運営出来る超低コストのSuperFly に活路を求めるしかなかったのです。

HBOの契約者数は約4000万人。World Championship Boxing なら100万人なら成功ライン。Boxing After Dark でも最低50万人は欲しいところでしたが…。

しかし、SuperFly の視聴者数は想像以上に伸びず、最終回となった2018年の第3回大会では30万人にも届かない大惨状で、HBOはこの年限りでボクシングから撤退してしまいます。

 

【期間】
2017年9月9日(第1回)〜2018年9月8日(第3回)。初回はカルフォルニア州カーソンのスタハブセンター。2、3回はやはりカリフォルニア州イングルウッドのザ・フォーラム。

軽量級の一般ファンがアクセスしやすい西海岸の会場を選択したのは間違いではありませんでしたが…。
 
 

【参加者と★勝者】
★シーサケット・ソールンビサイ、★ファン・フランシスコ・エストラーダ、ローマン・ゴンザレス、カルロス・クアドラス、★井上尚弥、井岡一翔ら。

この大会でキャリアハイの60万ドルの報酬を得たロマゴンでしたが、なにしろ「総額100万ドル」の天井から、それ以外の選手の報酬は抑えられ、第3回大会の井岡に至っては2万5000ドル。

ロマゴンのPFP1位の看板でコアなファンを引き寄せようと努力しましたが、第1回大会でロマゴンが失神KO負けの大誤算。

試合前1カ月から細かく取り決められた計量でシーサケットを削る契約も、全く機能しませんでした。

ロマゴンのために作られた大会でしたが、ニカラグアのグレートがSuperFly のリングに上がったのは第1回大会のみです。

番狂わせで敗者となったものの、ロマゴンはキャリア最高の60万ドルを稼ぎました。

〝勝者〟シーサケットはリング誌でも大きく特集され、待遇の良い ONE Chamoionship に活躍の場を移します。

従来から評価の高かったエストラーダもリング誌やESPNのPFPリストに定着するなど〝勝者〟と言えるでしょう。

最大の敗者はHBOでしょうが、総費用100万ドルの興行にすぎません。この興行が原因で撤退したわけではないので(もちろん大成功していたら雲行きは変わっていたかもしれませんが、軽量級で大成功はありえません) 、敗者とは言い切れません。

また、日本からのスポンサー料・放映権料がキックバックされる形で井上尚弥は、軽量級では破格の報酬で全米デビューを飾りました。

 

【2020年段階での歴史的評価】 
米国で需要の低い軽量級のため、HBOのボクシング撤退を象徴する失敗必至のヤケクソ低コスト企画として記憶に残されています。

スーパーフライの視聴者数は初回から低空飛行を強いられ、最後の興行となった第3回は30万人にも届かず、HBO史上最低をマーク。

しかし、PFPファイターがひしめくハイレベルな115ボンドを看板にしたイベントは、超少数派とはいえ軽量級の楽しみ方を識るマニアにとっては垂涎でした。

米国ボクシングを支えてきたHBOは、21世紀になるとボクシング市場の低迷は決定的となり、毎年のように予算削減を強いられます。

スーパーフライの視聴者数は初回から低空飛行を強いられ、最後の興行となった第3回は30万人にも届かず、HBO史上最低をマーク。

超低コストで運営出来る軽量級に生き残りを賭けましたが、HBOボクシングの瀕死状態を象徴する興行になってしまいました。

優勝者、Undisputed Champion を決めるトーナメントではなく、ロマゴン・ウォーズを想定したラウンドロビンと呼べるかもしれませんが、井上尚弥や井岡一翔も結果的にスポット参戦に終わるなど、誰がレギュラーの参加者なのかがわからない、悪い意味での主人公不明の大会でした。

軽量級史上初のPFPキングになったローマン・ゴンザレスをコスパの良いスターに育てるという〝台本付き〟は引き裂かれましたが、マニアにとってはPFPファイターが目白押しで非常に見ごたえのあるイベントだったことは、軽量級ファンは忘れません。

それにしても、米国で軽量級がいかに厳しい立場にあるかを何度も実感させられた大会でした。

メキシカンで試合も面白いエストラーダですら、10万ドルを超える報酬を得たのはキャリアで3度だけ。カネロ・アルバレスの0.3%以下ですから、もはや同じプロスポーツとは呼べません。サッカーの男女でもそこまで酷い格差はありません。

では、エストラーダがプロとしてのパフォーマンスや技術において、カネロの300分の1以下か?と聞かれたら「全く五分」と即答・断言します。

エストラーダにカネロ並みの線路を敷いていたら、ロマゴンとの試合は判定勝ち、今頃はカネロと同じ4階級制覇していたでしょう。

「体が小さく生まれるってことはボクサーにとってこれ以上の不幸はないのさ」。エストラーダの言葉が悲しく響きます。



【報酬・興行規模】
興行規模はまさかの約100万ドルという超低コスト。

最も潤沢な予算が当てられた第1回大会の報酬でも以下の通り。

ローマン・ゴンザレスがキャリアハイの60万ドル(約6600万円)、対するシーサケット・ソールンビサイが17万ドル(1870万円)。ファン・エストラーダとカルロス・クアドラスは6万5000ドル(715万円)、6万2500ドル(687万円)を分け合います。

井上尚弥は18万2500ドル(2000万円)を受け取り、ニエベスは3万5000ドル(385万円)。

実際には、井上は日本からのスポンサー収入、TV放映権などからキックバックされ2倍以上の約40万ドルを手にしました。