1980年代の絢爛豪華なミドル級の覇権争い。

世界のボクシングってこんなに凄いのか!!! 

個性豊かなスーパースターたちが繰り広げるラウンドロビン、総当たりの戦いは、日本のプロ野球が世界一面白いと信じていた10代半ばの私にとって衝撃そのものでした。

シュガー・レイ・レナードの華麗、ヒットマン・ハーンズの凶悪、マービン・ハグラーの圧倒、ロベルト・デュランの颯爽、ウィルフレド・ベニテスの天性…彼らは、仮面ライダーやウルトラマンに登場する怪人や怪獣と同列に現実離れした存在でした。

小学校の野球クラブで先輩から「怪獣ゼットンはやばい」みたいなことを聞かされてゾクゾクしたのと、中学生のときに覗いたボクシングジムで「レナードvsハーンズなんてどんな試合になるんだ?」と、当時は遥かに年配に見えた高校生や大学生のボクサーの方々の話にワクワクしたのは、冗談抜きで全く同じ感覚でした。

日本でプロ野球を見て「江川、スゲー!」とか騒いでいる現実とは全く別の世界に、太平洋の向こう側に、とんでもないヤツらがいる。

そのことに気付いてしまったのです。
3995759_p0_square1200
日本人が、世界で大暴れしている怪獣と戦う。

ありえないと思っていたことが、現実になろうとしています。

このメガファイトが実現すると、日本人による日本ボクシング史上最大の興行となります。

もちろん、興行の大きさとボクサーとしての価値は必ずしも比例しません。

ボクサーとしての価値を考えるとき、リング誌から60年代最強と破格の評価を得たエデル・ジョフレを2度撃破したファイティング原田が歴代最高で誰も文句はないでしょう。

原田は60年代でも5位にランクされていますが、現在のような定期的に更新されるPFPがあれば、ジョフレに連勝した時点で1位か2位だったと推測できます。

井上尚弥は将来、PFP1位に登る可能性が十分にあり得ます。しかし、2020〜2029年のデケイドでも原田並みのトップ5に数えられるか?となると厳しいのではないでしょうか。

そして、怪獣との対決の舞台に上がる村田諒太になると、最も評価が高いはずの現役時代、今ですらPFPにはカスリもしていません。

リング誌のダグ・フィッシャーは、読者から 「 Who do you want next for Canelo? カネロの次の対戦相手として誰と戦って欲しいか?」と訊かれて「Charlo or Smith. I would be OK with Murata.  チャーロかスミス。村田もいいと思う」と答えてくれています。

しかし「村田」の理由については「カネロは昨年、ミドルとライトヘビー級でトップ選手と戦った。今年最初の試合にトップ10では下のレベルの“breather” (息抜き)を選んでもいいじゃないか」としているのです。

はぁ!?金メダリストをつかまえて“breather” だとッ!!

舐められたもんですが、プロでの実績だけをカネロと比べると、悔しいけど文句は言えません。

村田は日本ボクシング史上、最も商業的価値の高いボクサーですが、ボクサーとしての本質的な価値となると、ミドル級という特別すぎるクラスを考慮しなければ、歴代10傑にも入らないかもしれません。

しかし、欧米に体格で劣るアジアでミドル級という正真正銘の黄金階級のトップ戦線で戦っているからこそ、この大きなチャンスが訪れたのです。

フィッシャーは「村田の右は階級最強」とも評価してくれていましたが、彼の評価はそこまでということです。「右の一発しかない」と見ているのです。

村田が“breather” などではなく、“shocker”(衝撃を与える人)であることを見せてやりましょう。


さらにしても!年内にも実現しそうなメガファイトです。

来年以降は 「東京ショッカー」が何を指すか、世界中のボクシングファンを大いに混迷させてしまうでしょう。

それって「ダグラスvsタイソン」のことなのか?それとも「村田vsカネロ」のことなのか?

ショッカー。いいですね。イー!です。

「東京ショッカー2」。いいですね。イー!です!

怪獣退治にはこれ以上ない、絶妙のタイトルです。