シューズの話は一旦、置いておきます。


本題です。「箱根駅伝はどこへ向かって走るべきか?」。

ご存知の方も多いと思いますが、箱根駅伝は関東学連が主催する関東の大学による駅伝、つまり全国より格付けが下の地域の大会です。

ボクシングでいう地域タイトルですね。WBO中米カリブのベルトみたいなものです。

ところが、この地域タイトルでしかない箱根駅伝が、日本学連主催の「秩父宮賜杯 全日本大学駅伝対校選手権大会」よりも人気でも実力でも喜劇的なまでに圧倒的な存在感を示しているのです。

大学の場合は関東への一極集中傾向が顕著で、アメフトなど一部の例外を除いて他のスポーツでも関東のレベルが高い傾向ははっきりしています。

しかし、箱根駅伝ほど実力・人気で全く次元が違うことはありません。

四半世紀ほど前までは箱根駅伝はラグビーや野球からずっと引き離された第3の大学スポーツに過ぎませんでした。

選手目線でも箱根駅伝優勝と関東インカレの個人種目で優勝なら、普通に後者を選んでいました。ましてや全日本インカレの個人種目のタイトルとは比べるべくもありません。

しかし、時代は変わりました。日本テレビと広告代理店の努力の結晶で、箱根駅伝はいまや大学スポーツの中で傑出した存在感を示しています。

正月2、3日という実はニッチな日程とはいえプロ野球やJリーグのチャンピオンシップを凌駕するような視聴率を6時間近くもキープする、スポーツの枠を超えた怪物的なコンテンツになりました。

私が大学生の頃も箱根はもちろん憧れの大会でしたが、個人種目でインカレで成績を残すことの方が優先順位は上でした。

そんな傾向を裏付けるのがインカレのロードレース種目の存在感です。

インカレの中長距離種目は800、1500、3000SC(障害)、5000、1万メートルのトラック5種目にロードレースが1種目の計6つがあります。

このロード種目、関東インカレでは1部、2部ともにハーフマラソンで実施されています。私たちの頃は1部が30km、2部が20kmでした。

前述のように「インカレ個人種目>箱根駅伝」の時代です。そして「トラック種目>>>ロード種目」という〝貴賎〟も明らかに存在していました。

簡単に言うと「1万や5000で大学代表になれない選手がロードに回る」という図式です。

私のように三流大学の三流選手はトラックの標準記録は持っていても、上位争いが出来る(つまりトラックよりもレベルが低い)とロードを選ぶのは三流ゆえの例外でした(自分がより輝くためによりレベルが低いところを目指す=ボクサーの減量にも似た行為です)。

それがいまや、トラック種目と同じステイタスになっているのです。昨年の1部優勝は日大のドゥング選手、2部優勝は国学院大の土方英和選手で二人とも先日の箱根では花の2区を駆け抜けました。

存在価値が巨大になった箱根の区間距離に近いハーフマラソンが見直され、学生トップがシノギを削る激戦区になるのは「箱根>>>トラック」の時代では当然の趨勢です。

さらに、現在の箱根駅伝の本質を露呈しているのが、ハーフマラソンでは1部校と2部校の標準記録が同じで、2部の優勝タイムが1部を上回る「下剋上」が普通に起きているということです。

昨年はドゥングが64分57秒、土方65分18秒で優勝タイムこそ1部が上回りましたが、65分台は1部はドゥング含めて6人、2部は8人と下剋上。

もちろん、2部には青学、國學院、帝京、東京国際、駒沢、創価、中央学院、拓殖、神奈川と箱根出場校に加えて専修大、亜細亜、東農大、上武大などの長距離特化の強豪校がずらりと並んでいるのですから、実は1部が2部に勝つほうが下剋上ではないかという、わけのわからない事態が進んでいるのです。

早稲田や日体大、筑波大のように陸上競技部に割り当てられた資金をトラックやフィールド種目で分配するよりも、長距離、それも駅伝チームに集中投下するほうが箱根で好成績を残すのに都合がいいのは当たり前です。

ましてや、そもそもの資金が大きな青学などに、筑波などの〝総合〟大学が太刀打ちできるわけがありません。

私たちの時代、長距離・駅伝も含めた陸上競技のオールラウンドで圧倒的な強さを見せいていた筑波も今やこと箱根駅伝となると優勝はおろか出場したら「事件」というほどまでに、そのハードルは高くなりました。

こんなことを言うと「スポーツに貴賎はない!」「種目にも貴賎はない!」「どのタイトルも等しく尊い!」と怒られてしまいそうですが、スポーツには厳然と貴賎がありますし、今なら箱根駅伝優勝と競歩の世界新記録では笑うしかないイビツな人気格差が横たわっています。

全国大会がチリに見えるほど巨大化した地域駅伝の箱根は、青学の原晋監督が熱弁するように全国に解放するのが筋です。

もちろん、関東学連は「我々が努力して育てた箱根駅伝を大きくなったから全国に差し出せという方が筋違い。自分たちが努力しないで努力した人の成果を寄越せというのは虫が良すぎる」と反論していますが、あんたたちは営利団体じゃない、陸上競技の健全な発展を目指す組織のはずです。



そして、箱根駅伝、関東陸連に巨大なお金が動いているはずですが、個々の大学は資金集めに苦心しています。

先日、大迫傑や為末大らが投げかけました。


「箱根の利益はどこへ行ったの?」。


続きは、メイウェザー抜きのマネーの話です。