「ボクシングには4つも団体があって世界チャンピオンが何人もいる。誰が一番強いのか、ファンが一番知りたいことが、わからないままなんておかしいでしょ?」。

よくぞ、言った!

井上尚弥の言葉は至極真っ当です。

勇敢で聡明な若者がWBSSへの参戦を表明したのは、羊頭狗肉だった〝高額賞金〟トーナメントに惹かれたからではありません。

試合後に近所のコンビニですするカップヌードルを至高のグルメと語る彼にとって、このトーナメントに参加した動機は「誰が一番強いのかを決めてやる。それは俺だ」という強烈な思いだけです。

それだけに、優勝しても2団体のストラップしか手に入らないことは残念でなりません。

話が横道に逸れる前に、今夜のお題は「階級最強決定トーナメント」です。

「世界王者が何人もいる状態は異常。ボクシング界に健康を取り戻すために最強決定トーナメントをやろう!」。

そんな掛け声でキックオフしたトーナメントは、WBSSが最初ではありません。

最近では、2009〜2011年に渡って Showtime が展開したスーパーミドル級最強トーナメント Super Six World Boxing Classic (スーパー6)。

やはり、Showtime が2010〜2011年にスーパー6のミニチュア版として企画したバンタム4。

WBSSも含めるとこの10年で3つの「階級最強決定トーナメント」が開催されたことになります。
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ダークホースながらスーパー6で優勝、年間最高選手賞にも選ばれたアンドレ・ウォード。今となってはどうしてウォードがダークホースだったのかはわかりません。〜リング誌2012年5月号から〜

遡って、1980年代後半にはドン・キングが打ち上げた大花火「ヘビー級最強トーナメント」。

そしてさらに遡って1977年、「ボクシング界最大のスキャンダル」の一つ、大きく醜い汚点となった「United States Boxing Championship」が立ち上がりました。

全米地上波ABCの莫大な予算を引き出し、リング誌の全面協力まで取り付けたのは、やはり必要悪(不必要悪?)のキング。

United States Boxing Championship kicked off early  1977 and was promoted as a tournament to name America's best fighters in each division.

WBAからWBCが分裂してから、まだ10年も経っていません。世界王者の権威が崩れ落ちる前の時代です。

それでも「王者が二人もいるなんて許せない」という声は今以上に強かったのです。

翻って、現在…。

現役ボクサーの井上が「おかしい!」と声をあげましたが、一般のファンにそこまでの危機感があるでしょうか?

もしかしたら、現代のボクシングファン、我々は〝茹でガエル〟なのかもしれません。そうだとしたら、とっくに茹で上がっていますね。

水分も飛ばされてミイラ状態かもしれません。

なるほど、確かにミイラなら大きな声も出せず、思考回路も麻痺しているのは無理はありません。



ーーリング誌の信用が失墜した、ボクシング界最大のスキャンダルに迫ります。