「米国から学ぶべきものなど何もない」とバブル期の日本みたいなことを口走っていたエディ・ハーンでしたが、本格的に進出した米国に「この市場にはまだまだ大きなポテンシャルがある」と期待を膨らませています。

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この10年でリング誌を単独カバーしたプロモーターはエディ・ハーンただ1人です。もちろん、オスカー・デラホーヤとフロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオのスター選手兼プロモーターは除きます。

 
米国ボクシングはカネロ・アルバレスや、先日のエロール・スペンスJr.対マイキー・ガルシアなど大会場に大観衆を集めてはいるものの、それは氷山の一角ですらない極めて稀なケースで、テレビ視聴者数は悲惨な状況に陥っています。

そのことは、長らくボクシング界を圧倒的にリードしてきたHBOが、このスポーツからの撤退を決断したことからも明らかです。

ボクシングは団体と階級の増殖で内部からも腐敗、市場は縮小する一方です。

一方で、同じ格闘技のUFCは順調に市場規模を拡大させています。

「1団体各階級に王者は一人だけ」のUFCと、一つの階級に何人の王者がいるのかもはや誰にもわからないボクシングとの差が、両者の明暗を分けているというのはある意味正解ではありますが、それが大きな理由ではありません。

米国ボクシングを支えるファン層は「55歳以上の男性」が最大のボリュームとなっています。

一方でUFCは18〜34歳の若い男性が市場を牽引、若さ=将来性という意味だけでなく、友人やときにはガールフレンドまで巻き込んでMMAの魅力を宣伝してくれているのです。

ハーンは「どのスポーツでも55歳以上の男性がファンの中核になると、その末路は悲惨だ。その危険水域に米国ボクシングはどっぷり浸かってしまっている」と危惧しています。

「私たちが英国でまず取り組んだのは、ファン層の若返りだ。若者たちが興味を持ってくれる宣伝と演出をとにかく徹底させた。彼らは、老後の不安から財布のヒモが固い+55層とは違い、趣味にカネを使い、友人知人まで連れて来てくれるんだ」。

ボクシングで派手なのは試合内容だけでいい、なんていう保守派の老人なんかは構ってられないということです。

米国のカジノ&リゾートで開催されるボクシングイベントの前座は、空席ばかりが目立ち、セコンドの声が会場に響く、葬式みたいな雰囲気になっています。

ときには、メインでもフルハウスにならないことも珍しくありません。

ボクシングのイベントを華やかなパーティにして盛り上げないと、やって来るのは一部の盲信的なマニアと、もうすぐ現実でも葬式を迎える人たちだけです。

イリュージョンやミュージックショウと抱き合わせてボクシングの無料チケットをばら撒くカジノリゾートの「招致ビジネス」は、プロモーターが傘下の選手をプロテクトしてファンが望む試合を組んでいません。

これは、瀕死のボクシングの首を絞める行為です。

しかし、ファンが見たいマッチアップにはプロモーターの壁と、テレビ局の権利が大きく立ち塞がります。

それでも、誰もが見たい試合を組んで、派手な宣伝と華やかな演出で舞台を飾る…それを用意すれば若者はリングに吸い寄せられるし、会場に来ることが出来なくてもテレビやネットで見ようとしてくれるはずです。

イリュージョンやミュージックショウも同じです。

若者たちは、純粋にマジックを楽しんだり、歌だけを聴きに来るわけではありません。

奇抜な演出やサプライズも、同じくらいに期待しているのです。
You have to make it cool again. You have to make it sexy,” Hearn said.  「カッコ良くやらなければならない、セクシーに見せなきゃならない」(ハーン)
今のヘビー級は、米国ボクシングを復活させる大きな可能性を秘めている。

アンソニー・ジョシュアとデオンティ・ワイルダーが戦うとなれば、英国ではもちろん米国でもとんでもないイベントになります。

エロール・スペンスとテレンス・クロフォードの間にはプロモーターと放映権、分厚い壁が二つも立ち塞がっています。

ジャレット・ハードとハイメ・ムングイアにも同じことが言えます。

この凋落する市場を救うには、ファンが見たいカードを魅力的な演出を伴って届けるしかありません。

それをやってもダメなら、そのとき初めて「ボクシングは終わった」と絶望するべきなのです。

メイウェザーvsパッキャオは市場活性化に失敗しましたが、イベントは大成功でした。

あの試合が白熱したものであったなら一般のスポーツファンは、ボクシングを見直したでしょう。

メイパックのようなカードを惜しみなく組むことで、面白い試合も必ず生まれてきます。

ファンもメディアも、プロモーターやマネージャーが「相手が逃げたから試合が成立しなかった」「こっちはやる気だったのに向こうはそうではなかった」と繰り返す言い訳にはうんざりしています。

「ファンにとってはプロモーターが誰とか、どこのテレビ局が放送するとか、そんなことは全くどうでもいいことなんだ。ファンは面白い試合が見たい、誰が一番強いのかを決めて欲しいだけだ。王者を増やすことが利益につながるアルファベット団体には、まともなことなど期待できない」。

その通りです。

王者と階級を増やすことが商売のアルファベット団体は、どんなに綺麗事を並べてもその本心は変わりません。

WBAやWBCなどが「一つの階級に複数の王者が乱立する現状は残念」と嘆くのは、死の商人が「地球に平和が訪れますように」と祈る姿とダブります。

「ヘビー級には私がプロモートするスターが並んでいる。オレクサンダー・ウシクもこの階級に上げてきた。かつて〝ヘビー級が動くが如く、ボクシングは動く〟と言われた。まずはヘビー級だ。ヘビー級が最も尊敬されるスポーツだった時代を、もう一度取り戻す」。

一人のプロモーターで出来ることは限定されます。

しかし、ハーンは本気です。

以前口にした「マッチルーム・ジャパン」構想、是非とも具体化させて欲しいですね。

日本のジム制度や、同国人のエース対決を敬遠する文化…もしかしたら日本の方が米国よりも障害物は多いかもしれませんが…。