海外メディアと、日本メディア。

具体的にいうと、米国のリング誌、英国ボクシングニューズ誌やスポーツイラストレイデッド誌はもちろん、ニューヨークタイムズ紙やCNN、ほぼあらゆる海外メディアと、ボクシングマガジンや日本の新聞の感覚の違いについて、ふれてみたいと思います。

先日のマニー・パッキャオvsルーカス・マティセでも、両者の齟齬が見られました。
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海外では「史上唯一の8階級王者パッキャオと、WBAセカンドタイトルを持つマティセ」の対決…つまり主要メディアはマティセのタイトルを世界王者とは認めていないのです。

パッキャオはフライ(チャチャイ・ダッチボーイジム)、フェザー(マルコ・アントニオ・バレラ)、ジュニアライト(ファン・マヌエル・マルケス)、ジュニアウェルター(リッキー・ハットン)の4階級でリネラルチャンピオンを破り(これも世界唯一最高に数えられています)、ジュニアフェザー、ライト、ウェルター、ジュニアミドルの4階級でアルファベットタイトルを獲得したというのが世界の共通認識です。

一方、日本は頑なに「主要4団体のタイトルでなければ王者と認めない」という姿勢で、パッキャオはこの国では6階級制覇と表現されるのが常です。

日本が認めていない2階級はフェザーとジュニアウェルターですが、バレラとハットンは階級最強のリネラル王者で(二人とも主要団体の承認はありませんでしたが、リング誌王者でした。

そして、マティセに目を向けると世界では「元ジュニアウェルター級王者」ですが、日本ではジュニアウェルターとウェルターの2階級制覇です。

両者の大きな齟齬は、世界が「WBAにスーパー王者が存在する場合、レギュラー王者は王者と認めない」という立場に対して、日本は「レギュラー王者もすべからく認め、暫定王者まで王者とカウントする」ことから生じています。

“Victory sees Inoue claim a version of the WBA bantamweight title which is unrecognized by THE RING. Ryan Burnett is the WBA titleholder at 118 pounds.
「この勝利で井上はWBAが認める世界タイトルの一つを獲得したが、リング誌ではこれを世界タイトルとは認めない。WBAバンタム級王者はライアン・バーネットである」。リング誌や ESPNなどほぼすべての海外メディアはWBAの「世界王者二人体制」を認めていません。

その理屈で世界では4階級制覇のノニト・ドネアは、日本ではジュニアバンタムの暫定王者も認められて5階級制覇となるのです。

承認団体が増殖するのは仕方がないにしても、同一団体が二人の「一番強い者=世界王者」を擁立するのはどう考えてもおかしな話です。

また、暫定王者は文字通り暫定で、王者ではありません。

村田諒太と井上尚弥のタイトルも「スーパー王者が存在する、レギュラー王者」でリング誌やESPNはもちろん、世界の一般メディアからも「世界王者」とは認められていないというのは、日本のボクシングファンとしては忸怩たるところですが、十分納得できる理屈です。 

日本が主要4団体に頑迷にこだわるのは「マイナー団体の王者まで認めていたらボクシング界がますます混乱する」という理由もあるかもしれません。しかし、主要4団体のタイトルを保持していないリング誌王者は珍しく、このメディアのタイトルを認めても何か差し支えがあるとは思えません。

実際、現在のリング誌王者はジュニアフライ(ヘッキー・ブドラー)、ジュニアバンタム(シーサケット・ソールンビサイ)、ライト(ワシル・ロマチェンコ)の4人で、主要4団体のいずれかから認定された世界王者でもあります。

パッキャオとの対戦時、リング誌王者にもかかわらず、主要4団体の承認は一つも受けていなかったバレラやハットンは非常に稀有な存在だったと言えます。

何かと言えば「権威のあるリング誌で…」と虎の威を借るのが好きな日本のメディアですから、もっと素直に虎の威を認めても良いのではないでしょうか。