Aサイドの選手がパワハラ的にBサイドに要求するキャッチウェイトは、言い訳のできない〝悪〟です。

しかし、プロボクシングを見世物、興行として見るなら、TV視聴率が上がる、チケットが売れるマッチメイクを追求するのは自然の流れです。世界一を決めるまともなシステムすら持たないプロボクシングを純粋なスポーツと考えている人はいないでしょうから、キャッチウェイトごときでゴタゴタ言う方が野暮なのかもしれません。

カネロやチャベスJr.を「過保護に作られたスター」と揶揄しても、「明らかに階級の違う選手を無理やり戦わせるナンセンスな試合」と糾弾しても、それでも今年一番の興行になってしまうわけです。そして、週末の日曜日、私も仕事先の移動中にタブレットに見入ってしまうことになります。


【ミドル級の世界戦を155ポンドで行う「カネロ級」も興行優先のプロボクシングの世界では必要悪?】

考えてみれば、フルマラソン世界記録保持者のデメス・キメットとウサイン・ボルトを600mで対決させるようなものです。実現することのない、その必要もない、全く意味がないレースですが、正直、見てみたい気もします。400mまで圧倒的に先行するボルトがそこから失速、キメットとの差がどんどん詰まる、しかし、残りの距離が微妙…。美しく800mを走り切る専門選手のレースの方が遥かにハイレベルなことはよくわかっているのですが…、下世話な見世物以外の何物でもありませんが、野次馬根性が刺激されますね、見たいです。

興行の名の下には、キャッチウェイトは必要悪とも言えます。これがなければ最近だと、マニー・パッキャオの〝空前絶後〟の8階級制覇はおそらく無かったでしょうし、カネロが155ポンドで〝ミドル級〟王者になって防衛までしちゃうなんて滑稽なこともありえませんでした。

それでも、今回のカネロ対ジュニアはタイトルも賭けられていませんから、罪は軽い方です。164.5ポンドじゃ賭けようがないからですが、レナードだったらWBCに掛け合ってミドル級とスーパーミドル級の二階級を賭けた双子のダイアモンドベルトを作らせていたかもしれませんね。

宿命のライバルと早くからその対決が渇望されていたカネロとジュニア。しかし、若くから注目されていたがゆえに、歳月の経過とともに二人の階級の隔たりは広がり、激突の日は永遠に訪れないと諦められていました。そんな試合が実現しちゃうんです。

キメットとボルトを対決させようなんて発想は、国際陸上競技連盟や国際オリンピック委員会が統括していてはありえません。魑魅魍魎が跋扈する、何でもありのボクシング界だから、こんな荒唐無稽なマッチメイクも簡単に実現しちゃったのです。

先週のジョシュア対クリチコは、スポーツとしても純粋に楽しめるアスリートの激突でした。

しかし今週は、深く考えないで、因縁の対決をとにかく楽しむショウです。メキシカンのスター同士の激突は、ただでさえ盛り上がりますが、今回は過保護な温室栽培のスーパースターが拳を交えるわけですから、燻り続けた遺恨、ねじ曲がった嫉妬、醜悪な怨念は想像を絶するものがあります。

そもそも、ジュニアがまともに計量をパスできるのか。巷間囁かれている、意図的なオーバーウェイトはあるのか。計量後のフェイスオフ(睨み合い)は乱闘に発展するのか。

デラホーヤと父チャベスは、3度目の殴り合いを今回はグローブをはめずに、スーツ姿で見せてくれるのか。

実際の試合もダーティファイトに陥る可能性が十二分にありますね。泥試合の発端はカネロの度重なるローブローか、ジュニアの過剰なプッシングか。

ジュニアが負けたら、「誰に負けても構わないがカネロに負けることだけは絶対に許されない」と震える声で語っていた父チャベスは気が狂うのではないでしょうか。一方、カネロが負けたら、経営難が噂されるGBPの虎の子を失い、血の気が引いて真っ青になったデラホーヤが拝めるでしょう。

全部、ひっくるめて楽しみましょう!いやー、日曜日の昼時が楽しみになってきました!