ボクシングのWBAやらWBCのタイトルホルダーを「世界チャンピオン」と呼ぶとすると、2014年10月12日(土)に愛知県国際展示場、10月13日(日)〜14日(月・祝)にかけて有明アリーナで開催されるイベントは日本スポーツ史上で類を見ない8つの「世界チャンピオンシップに日本人が絡む」画期的なイベントになります。

なにしろ、日本人の世界チャンピオンが6人も登場、二日間のイベントが終わると7人も世界チャンピオンが居並んでいるかもしれないのですから。

こんなすごい、すごすぎるスポーツは他にありません…。世界が近い、近い、近すぎる。

村田諒太は軽量級を指して「日本で好き勝手できる」と皮肉りましたが、これは村田自身もまた同じ。人気クラスのミドル級もアルファベット王者を好き勝手できました。

軽量級と違うのはコストが大きかったことと、何よりも「五輪金メダリストの村田諒太が好き勝手した」ということでした。

村田がゲンナジー・ゴロフキンとの大勝負に勝ち、カネロ・アルバレスとの決戦に駒を進めても舞台を東京に持ち込めたでしょう。そこも勝って再戦となると、ラスベガスに引っ張り込まれるのは避けられませんが。

ヘビー級でも、もし但馬ミツロが奇跡の復活劇で世界ランカーを撃破、オレクサンデル・ウシクとのタイトルマッチに漕ぎつければ、開催地は日本になるはずです。しかし、タイソン・フューリーやアンソニー・ジョシュア、特にマッチルームのジョシュアが相手となると、エディー・ハーンがビビりまくってウェンブリー・スタジアム開催を譲らないかもしれません。

一方で、コスパが何桁も違う軽量級では現在の海外選手で日本に引っ張り込めないタレントは1人も見当たりません。むしろ、貧困な彼らは軽量級としては報酬が破格の日本に行きたがるでしょう。

三日で7つの世界タイトルマッチ。野球やサッカーで「本物の世界」がはっきり知らしめられた時代に、こんなことを続けていると、ボクシングのステイタスがますます怪しく没落していくだけです。

とはいえ、そもそもの構造が大間違いの〝世界〟なのですから、みんなで毒酒を飲んで酔うしかないのかもしれません。

ボクシングは二つの拳、それもナックルパートだけを使う非常に精緻で、最も面白いスポーツだというのに。



さて、すでにESPNなど良識のあるメディアはアルファベットタイトルについて「world champion」という表現をすでに控えています。

このブログでも、それにならって「世界王者」ではなく「WBA王者」「WBC王者」、つまり世界王者ではなくアルファベット団体のタイトルホルダーという位置付けで書くようにしています。WBAやWBCなどがデタラメランキングを元に勝手に認定した何人も存在する王者を世界王者と呼ぶことはできません。

世界チャンピオン=世界一=世界に1人だけ、という当たり前すぎる常識に照らすと、世界チャンピオンはUndisputed(議論する余地がない)でなければなりません。

その意味では、現在の日本人の現在の世界チャンピオンは7人ではなく、ジュニアフェザー級の井上尚弥だけです。



前置きが長くなりました。

わずか3日間で名古屋と東京という、カリフォルニア州にすっぽり入るような狭いエリアで〝世界〟を騙るタイトルマッチが安物のネズミ花火のように、8試合も立て続けにスパークします。



まずは、常滑市の愛知県国際展示場。プロモーターは亀田興毅。

◾️10月12日(日)

IBFジュニアフライ級12回戦

©︎シベナティ・ノンティンガ vs 矢吹正道

寺地拳四朗に痛烈にリベンジされた矢吹が挑戦するのは、階級最強と目される南アフリカの〝Special One〟ノンティンガ。

世界基準の相手との対戦経験は意外にも矢吹が上。相手を自分の土俵に巻き込むスタイルと空気をまとう32歳のスラッガーが、25歳のスペシャル・ワンを飲み込む可能性は十分。

とはいえ、ボクサーとしての能力はあらゆる要素でノンティンガに軍配が挙がります。

序盤で主導権を握られてしまうと、終盤には矢吹がストップされる、実力通りの展開になりそうです。

王者の勝利が1/3(1.33倍)、矢吹が21/10(3.1倍)。

矢吹正道、2度目の番狂せを起こせるか?





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そして、10月13日(日)からは、江東区の有明アリーナへ。こちらは帝拳のプロモート。

◾️10月13日(日)◾️

【第1試合】WBOジュニアフライ級王者決定戦 12回戦

岩田翔吉 vs ハイロ・ノリエガ

28歳の岩田は2度目の世界挑戦。前回のジョナサン・ゴンサレス戦は「ホームの日本」「攻め続けた」という合わせ技で勝利を支持されていたとしても大きな議論にはならなかったでしょう。

とはいえ、負けに不思議の負けはなし。下がって戦う相手に決定的な場面を作れないまま、36分間を浪費してしまいました。

今回迎え撃つ31歳のノリエガも、足を使って手数も多い面倒臭いタイプ。14戦全勝(3KO)と無敗とはいえ、世界基準の相手との手合わせはなく、ジョナサンから経験値とパワーと駆け引きのうまさを引いたようなボクサーです。

田中恒成、井上拓真、ユーリ阿久井政悟、堤聖也は高校時代に同じ階級で競り合ったライバルで、岩田が勝ち抜けていました。

彼らと同じイベントに登場するのも刺激になっているはず。

鮮やかなKO決着が期待できそうです。





【第2試合】WBAフライ級12回戦

©︎ユーリ阿久井政悟 vs タナンチャイ・チャルンパック


地方(岡山)から中央へ駆け上がった〝桃太郎〟が、2度目の防衛戦に迎えるのはタイのチャルンパック。

8月12日、完全敵地の名古屋で畑中建人を大番狂せで破った24歳のタイ人は一撃のパンチャーではな鋳物の、テクニックもスタミナも一定水準にある曲者。

IBFは空位ながらWBO王者のオラスクアガ、WBCをピックアップするであろう寺地、さらには英国の人気者サニー・エドワーズ、ガラル・ヤファイらマッチルームが抱えるタレントとの統一路線を見据えると「今度はフライ級がPFPファイターの生産工場になる」という見方も十分頷けます。

岡山からビッグファイトの主役へ。勝ち方も問われる一戦になります。





【第3試合】WBCフライ級王者決定戦 12回戦

寺地拳四朗 vs クリストファー・ロサレス

最も信頼できる Transnational Boxing Rankings Board でPFP10位評価を受ける寺地拳四朗が2階級制覇に挑戦。

全戦全勝オールノックアウトの快進撃を続けていた比嘉大吾をストップしたのは、もう6年以上も前。世界基準の相手にきっちり負けているわかりやすいニカラグア人は、大方の予想で拳四朗の敵ではないと見られています。

不安材料はいきなりの112ポンド、慢性的に悩んでいたボクサーズナックル(伸筋腱脱臼)の手術の経過がどうなのか。

32歳のアメイジング・ボーイの戦闘能力が、がリング誌ジュニアフライ級王者のまま上がって来たのなら、オッズ(拳四朗1/7=1.14倍/ロサレス9/2=5.5倍 )の通りに試合が進み、36分間を要せずに2階級制覇王者が誕生しているはずです。





【第4試合】WBAバンタム級12回戦 12回戦

©︎井上拓真vs 堤聖也

重たい荷物を背負った2人は同級生。どんなに重くても、ファイターはとにかく戦い続けるしかありません。

この試合・二日間のイベントの隠れテーマは「拓真vs中谷潤人」。

個人的には強打のスイッチヒッターを応援していますが、拓真が勝つことで中谷戦が完璧なストーリーになります。

とにかく負けないことを優先させる拓真と、何がなんでも価値にこだわる堤。

普通に考えたら、拓真1/3(1.33倍)、堤11/4(3.75倍)という掛け率が生々しく見えて来ますが…。





◾️10月14日(月・祝)◾️

【第1試合】WBOフライ級12回戦

©︎アンソニー・オラスクアガ vs ジョナサン・ゴンサレス

プリンセスは、タクシー運転手に調髪師、ウーバーイーツの仕事を畳み、専業ボクサーとしての〝デビュー戦〟を迎えます。

5年前に田中恒成のスピードに翻弄されTKOで散ったゴンサレスは、今年2年近いブランクから戻ったばかりの33歳。

日本での人気と地位を固めたい25歳のオラスクアガにとって、前WBOジュニアフライ級王者のプエルトリカンとの初防衛戦は綺麗に倒さなければいけないボーナスステージ。

プリンセス4/9(1.44倍)、ゴンサレス11/4(3.75倍)。




【第2試合】WBOジュニアバンタム級級12回戦

©︎田中恒成 vs プメレレ・カフ

恒成はWBOジュニアバンタム級の防衛戦。もう22試合目なのか。もう29歳になったのか。

デビューから注目されてきた恒成は、多くのボクシングファンと同様に私もずっと見てきたボクサーの1人で、やはり思い入れがあります。

30歳の南アフリカ人、サウスポーのカフはこれがキャリア初の海外遠征。13戦10勝8KO無敗3分という戦績は、全く中身を伴っていません。数字から想像するようなパンチ力は全くない、

恒成のスピードにカフが順応する前に大きなダメージを与えたいところ。

恒成1/10(1.1倍)、カフ13/2(7.5倍)。




【第3試合】WBOアジアパシフィック・バンタム級王者決定戦 10回戦

那須川天心vs ジェルウィン・アシロ



〝野球全く見ないんですけど、毎日毎日大谷さんばっかで、みんな飽きないんスか?〟天心が初めて挑戦するタイトルはWBOアジアパシフィック。最近はアルファベット団体の地域タイトルが大量生産され、そのレベルは日本タイトル以下に希釈されているといっても大きな間違いがない状況です。

天心よりも3つ年下、23歳のアシロは直近2試合でWBOユース・アジアパシフィック、WBOオリエンタルの地域タイトルをピックアップした無敗のフィリピン人。

「フィリピン人だからパッキャオみたいなのを想像したけど全然違う」というように、教科書通りのボクシングをする〝The Gladiator〟は超攻撃型の突貫ファイターではありません。

初めてフィリピンを離れて戦うアシロにとって、天心のスピードと気持ちの悪い間合い・距離はもちろん、華やかな大会場のムードにも戸惑うかもしれません。

もちろん、パッキャオとは全く違うとはいえ、そこはフィリピン人。出稼ぎ、敵地は大歓迎、パックマンの血が流れているはずです。

不気味さはありますが、帝拳セレクションにヌカリはないはず。

天心1/10(1.1倍)、アシロ9/1(10倍)とオッズはミスマッチレベルに開いています。




【第4試合】WBCバンタム級12回戦

見どころは…。

デビュー48戦全勝の無敗レコードを井上拓真に止められた(2018年12月30日)チットパッタナを、中谷をどう料理するかに尽きます。

サウスポーのタイ人は拓真に敗れてから27連勝しているとはいえ、勝った相手のリストは世界基準どころか10回戦レベルにも達していない雑魚のオンパレード。

25歳の中谷が1/25(1.04倍)、30歳のチットパッタナが16/1(17倍)。まともなオッズではありません。

WBC1位のチットパッタナは、リング誌でもESPNでもバンタム級トップ10に数えてもらえない典型的な雑魚専。万一が起こると、2020年代の最大番狂せ賞が決定します。