【英国ボクシングニューズ誌から】

The Ice Bear Cometh: It is not legal to box professionally in Iceland, but Kolbeinn Kristinsson hopes his success in the sport will help overturn the ban

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コルベイン・クリスティンソン
は、世界ヘビー級チャンピオンを目指す14戦全勝8KOの巨漢ファイターだ。

6フィート6インチ(198㎝)、250ポンド(113kg)の堂々たる体躯はIce Bear(ホッキョクグマ)と呼ばれるのに相応しい。

現実のホッキョクグマが地球温暖化で氷が溶けてしまう危機に瀕しているように、クリスティンソンもまた氷のような頑迷と戦っている。

名匠シュガーヒル・スチュワードの指導を受け、ニューヨークのドミトリー・サリタのプロモートを受ける無敗の白人ヘビー級が商業的にも大きな可能性を持っているのは間違いないが、たった一つだけ問題を抱えていた。

アイスランドでは、法律でプロボクシングが禁じられているのだ。

いくつかの北欧諸国は「プロボクシングは危険」という理由から、このスポーツを禁止する法律を制定していたが、21世紀になってスウェーデンとノルウェーが禁止令を緩和した。

アイスランドもこの流れに追随するかと思われたが、1956年にボクシングを非合法とした法律が変わることはないまま、現在に至っている。

一方で、2002年にアイスランド五輪協会が先導してアマチュアボクシングの規約が完成、現在では700人のボクサーがリングに上がって技を競い合っている。

「たった700人」と思うかもしれないが、アイスランドの人口は37万人。この割合を英国に当てはめると、12万人になる。

アマチュアで40試合を戦い、ナショナルチャンピオンとして北欧のトップ選手にも勝利を収めているクリスティンソンは「アマチュアボクシングは人気がある。定期的にトーナメントが開催され、大きなショーでは千人単位で観客が詰め掛ける」と語る一方、プロボクシングについては「スウェーデンやノルウェーの禁止令は認定しない、コミッションの設立を許さないという内容だったが、アイスランドでは事情が違う。法律で禁止されている。もし試合を行うと逮捕される可能性もある。この国ではプロボクシングは犯罪なのだ」と悲嘆する。

 The police came and sawed the ring in half.

かつて、プロボクシングを強行した会場に警察が介入、ノコギリでリングを真っ二つに切り裂いたこともあった。

そのため、クリスティンソンはスウェーデン・ボクシングコミッションのライセンスを取得してプロデビューするしかなかった。

アイスベアの14試合はいずれも外国で行われ、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ハンガリー、米国、オーストリアと6カ国をサーキットしてきた。

外国人であるということは、チケットが売れないことを意味するが、アイスランドを中心としたスポンサー企業のサポートでなんとか試合をつないでいる。

2014年のデビューから丸10年で14試合というのは巨大な氷河が出来上がるようなスローペースだが、母国でプロボクシングが違法なのだから仕方がない。

そういう理由から、アイスランドにはプロボクサーはいない。アイスランド人もクリスティンソンただ一人だけだ。


それでも「母国で試合をしたい」という願いは、大きくなるばかりだった。


レイキャビクから程近いガルダベア出身のアイスベアは、海外で大きな成功を収めることでアイスランドの議会を動かせると信じている。

「ヘビー級のタイトルを獲れば、母国のみんなが私の試合を見たいと声をあげてくれるだろう」。

ノルウェーやスウェーデンがプロボクシングの統括団体設立に動いたのも、自国の選手が海外で花火を打ち上げて国民が盛り上がったからだ。

「今年は5〜6試合を戦ってランキングを上げて、主要団体のタイトル挑戦の足がかりにする。もう35歳になるから、来年にはサウジアラビア開催のヘビー級タイトルマッチに出場して大きなファイトマネーも手に入れたい」。



全戦全勝のアイスランド人の実力が怪しく不透明なことは、その対戦相手を見るまでもない。

しかし、サリタ・プロモーションズとシュガーヒルのコネクションから実現したスパーリング、そのパートナーの名前を聞けば考えが変わるかもしれない。

タイソン・フューリー、ジョセフ・パーカー、フィリップ・フルコビッチ、アジ・カバイェル、ジャレル・ミラー、ジャレッド・アンダーソン、ロバート・ヘレニウス…。

ボクシングファンに「ヘビー級の強豪は?」と頼むと、教えてくれるような名前がずらりと並ぶ。

練習はあくまで練習だがフューリーと互角に戦い、フルコビッチをKO寸前に追い込んだというアイスベアが一定の実力を持っているのは間違いない。

「とにかく、もっと試合がしたい。実力を証明して大きなチャンスを掴みたい」。

アイスランドと米国を往復、試合でも北半球を飛び回る生活は慌ただし過ぎる。

シュガーヒルも米国移住を薦めるが、アイスランドで家庭(妻と11歳と2歳の子供)を築いているクリスティンソンにとって、このスタイルで戦い続けてチャンピオンになること、母国の法律を変えること、レイキャビクで堂々と世界タイトルマッチを行うことが目標だ。


2025年。アラビア半島の砂漠の上に、アイスランドからやって来た巨大なホッキョクグマが上陸するとしたら…これ以上の物語はちょっとやそっとじゃ、お目にかかれないだろう。