このブログでも繰り返していますが、CompuBoxの数字は〝まやかし〟です。

それが、直接戦った二人のスタッツだとしても、現実の試合を映し出しているとはかぎりません。

ましてや、これから戦う二人の試合予想にCompuBoxを持ち出すのはナンセンス。対戦相手が違うのですから。

格下選手を相手に1試合しか戦っていない那須川天心と、世界戦だけで19試合をこなしている井上尚弥の被弾率を比べて「那須川の方が井上よりも防御面で優れている」と結論づけるのが大間違いであることは誰にでもわかるでしょう。

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また、やはり被弾率で世界戦24試合を戦っている井岡一翔のパンチ被弾率は18.4%、井上は20.8%だから「井岡の方が防御力は上」というのも間違いです。両者のKO率を見るまでもなく、井岡は「打たせずに打つこと」を優先し、井上は「少々被弾しても倒す」ことにこだわるスタイルです。

このように、まだ戦う前の二人、しかもスタイルが違う二人の戦力比較をスタッツから語る意味はほとんどありません。

しかし…その意味は「ほとんどない」だけで「ほんの僅かにはある」でしょう。

CompuBoxが集計している26カテゴリーの中で、井上がトップ10入りしているのは「着弾と被弾の差引」「1ラウンド当たりの着弾数」「1試合平均の着弾率」「1ラウンド平均のジャブの着弾数」「1ラウンドあたりのジャブ着弾率」の4つ。

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井上がトップにランクされているカテゴリーはありませんが、PFPファイター12人※に絞ってみると「1試合平均の着弾数=22.3発」「1試合平均のジャブ着弾率=25.5%」で1位。

※オレクサンデル・ウシク/テレンス・クロフォード/井上尚弥/エロール・スペンスJr./カネロ・アルバレス/ドミトリー・ビボル/アルツール・ベテルビエフ/タイソン・フューリー/井岡一翔/シャクール・スティーブンソン/デビン・ヘイニー/ガーボンタ・デービス。

では、スティーブン・フルトンは…?もちろん、PFPファイターには数えられていませんが、どのカテゴリーでも10位以内に入ることが出来ていないのです。

決定的なパワーパンチがあるわけでないのは誰にでも分かりますが、ジャブが優れているわけでも、手数が多いわけでも、被弾数・被弾率が低いわけでもないのです。

試合前のスタイルが違う二人の戦力をスタッツの数字から測る意味はあったとしても「ほんの僅か」です。それを踏まえても、フルトンはパワーが世界基準から大きく劣るだけでなく、攻撃力はもちろん、防御力も、何もかもが世界のトップクラスではないのです。

試合前のスタイルが違うことに加えて、井上は122ポンド初挑戦ということまで考慮すると、フルトンのパワーと攻撃力を改めて考え直すべきかもしれません。しかし、それにしても、です。

「スタッツの数字が優れているから、パンチの精度が高い」等とは限りませんが、スタッツで上位に入らないけど「パンチの精度が高い」とかはあり得ません。

では、今までの井上の対戦相手、スティーブン・バトラーやノニト・ドネア、エマヌエル・ロドリゲス、オマール・ナルバエスらは何か世界10位内のカテゴリーがあったのかというと、10年前の全盛期ドネアがジャブ(左パンチ)部門の末席を賑わせていたくらいで、他は箸にも棒にもかかりません。

まだ、フルトンの方がマシです。

その意味では、フルトンは今が全盛期、井上にとってキャリア最強というのはあながち間違いではありませんが、それでもやっぱりフルトンの戦力は世界のトップレベルから見ると相当に低いとみて良さそうです。

井上にとって、調整試合なしの122ポンド。フルトンはずっと122パウンドで戦い続け、攻撃力も防御力も世界レベルでは平凡ながら、トータルで見るとやりにくい相手、とは言えます。

思いっきり贔屓目な表現でいうと、数字ではたったの一つも現れない、目に見えない強さがある…。

まあ、いざ試合が始まると、井上にとっては非常に相性が悪かった…そんなことが絶対にないとは限りません。

リング誌の予想では18−3で井上。フルトン勝利を予想した3人もSDとMD、僅差判定で、明白な勝利は誰一人予想していませんが、カネロvsビボルは20−0−1で、一人が「やってみなければわからない」と答えたほかは全員の識者がカネロの圧勝と見ていました。


井上vsフルトンも、専門家やファンが何を語ろうと、明後日の有明アリーナのリングの上で起きたことだけが事実です。