体格で圧倒的に有利だったはずのセバスチャン・フンドラは、どうして負けたのでしょうか?体格差は幻想でしかないのでしょうか?

56kg級で五輪銀メダルのシャクール・スティーブンソンは、ウェルター級(66.68kg)から圧縮された吉野修一郎とのライト級戦(61.23kg)でパワーでも圧倒したのでしょうか?

打撃系の格闘技、特にボクシングは距離を争うスポーツです。そして、多くのスポーツで最も厄介な相手は異質であることです。

そして、あらゆるスポーツで勝敗を決する要素は圧倒的な技術差です。

スクリーンショット 2023-04-09 23.01.29



 ◉ヘビー級以外の16階級における骨格(身長とリーチ)の問題。



体重が同じなら「長身」であることは「薄い」ということです。

「長い」リーチが有利に働くのは「距離」をとって戦うときだけです。

身長197㎝、リーチ203㎝と規格外の154パウンダー、フンドラはその骨格を利した戦い方が出来ないまま、破滅の日を迎えてしまいました。

長身でリーチの長い選手は、相手の射程距離に入らないことが基本です。

短躯のファイターは、相手の懐に入ることで 、短いリーチが圧倒的に有利になります。

フンドラもそれをよく理解して、距離を意識して戦う練習を繰り返してきましたが、染みついた癖があの瞬間に顔を覗かせてしまいました。

わざわざ自分の異質の長所を殺してまでクロスレンジの打撃戦を選択し、勝ち抜けるほどの技術を、フンドラは持ち合わせていませんでした。

「吉野修一郎vsシャクール・スティーブンソン」のセミをつとめたジャレッド・アンダーソンのような「相手を波打ち際で釘付けにする」のが、リーチのあるボクサーの理想です(ヘビー級の場合は「同じ体重でない」のが当たり前なので、また別の視点になりますが)。

小さく手の短いカール・フランプトンはレオ・サンタクルスやノニト・ドネアのバリアを破って、彼らの体格を短所にしてみせました。

そして…マニー・パッキャオの技術レベルになると、自分よりも大きく重い相手を翻弄してしまうのです。





◉技術と相性の問題。

吉野は身長175㎝、スティーブンソンは170㎝。リーチはともに173㎝でしたが、スピードと技術で劣る吉野は、スティーブンソンが動き回らないようにクロスレンジでの打撃戦に引き込みたかったのですが、全て見透かされていました。

吉野のコーナーから飛んだ「相打ちでいい!」という声が、断末魔の悲鳴のように聞こえたのは私だけではないでしょう。第2ラウンドで倒された吉野はずっと「相打ち」を狙っていたのに、それをさせてもらえなかったのです。

スティーブンソンはテオフィモ・ロペスではありませんでした。

かつて、マーロン・スターリング相手に優勢に試合を進めた尾崎富士雄は、同じアメリカ黒人のマーク・ブリーランドには何も出来ずに敗れ去りましたが、あのタイプのボクサー、技術だけでなく身体能力も見せつけてくるアメリカ黒人は日本人にとって鬼門です。