箱根駅伝出場20校のうちちょうど半分の10校(駒澤大学、創価大学、青山学院大学、帝京大学、国学院大学、東京国際大学、山梨学院大学、神奈川大学、中央学院大学、駿河台大学)が関東インカレ2部校です。

2部校なのにどうして箱根駅伝だけ滅法強いのか?

この10校は漏れなく、大学から潤沢な予算を割かれる〝特殊部隊〟です。

戦後の優勝校は明治大学、中央大学、早稲田大学、日本大学、順天堂大学、日本体育大学、大東文化大学のわずか7校が1991年までの46年間のタイトルを分け合ってきました。

大東大を除くと、いずれも伝統の1部強豪大学。大東大は長距離種目に軸足を置いた特殊部隊、2部降格も経験しましたが1部校に踏みとどまっていました。

今回出場の2部校10校は、短距離やフィールド種目を完全に切り離した(あるいは存在しない)長距離だけなら1部強豪大学をも凌駕するモンスター部活です。

駅伝はインカレ種目にありません。長距離もトラック種目の一部です。そしてトラック種目はフィールド種目とともに陸上競技を構成している、やはり一部です。

長距離選手も短距離選手も、投擲選手も跳躍選手も、大学の陸上競技選手が追求すべき目標は個人と大学のインカレ優勝です。

しかし、この30年足らずで蔓延した長距離に特化したモンスター部活は、大学のインカレ優勝など目もくれず、それどころか1部昇格すら全く考えずに、関東のローカル大会に過ぎない箱根駅伝での露出だけにひたすら集中するという一元的な特徴を持っています。

様々な種目を擁する陸上競技の中から、長距離と箱根駅伝にだけ特化し、全日本の駅伝を「調整試合」と位置づけ、関東ローカルの箱根駅伝に全てのエネルギーを注ぐ。

恐るべき矛盾、何という倒錯でしょうか。

この歪なムーブメントに、箱根駅伝の統括団体・関東学生連合は「インカレ・ポイント」を予選会に導入するなど「箱根偏重」に歯止めをかけようとしました。

モンスター特殊部活が席巻する箱根駅伝に、陸上競技部として頑張っている大学の出場チャンスを広げようということです。

箱根駅伝が日本のスポーツ界で最強コンテンツの一つになったことで、①矛盾と倒錯が渦巻き、②それを抑えようとする動きが具体化しました。

①大学が知名度向上のために陸上競技から分離した「箱根駅伝部」に予算を集中投下。1部校を駆逐するモンスター部活が箱根を席捲。

②箱根路から追放される真面目に陸上競技に取り組む一部校を救済するために、関東学連がインカレピントを導入。

①の矛盾と倒錯について。あまりにも巨大な存在となった箱根駅伝が関東ローカル大会というのは、もはや書類上だけです。青学の原監督のように「全国に〝昇格させるべき〟」という意見はもっともに聞こえます。

歪んだ「箱根駅伝部」が全国的に生まれるだけ、という批判もありますが、少子化で大学受難の時代です。箱根の全国解放は、地方の無名大学が認知度と好感度を上げるチャンスを与え、地方再生の一翼を担えるかもしれません。

一方で、巨万のマネーを生み出すドル箱・箱根駅伝を関東学連が日本学連に譲る訳がありません。関東学連からすると「こっちが努力して育てた箱根駅伝。全日本が人気ないのはそっちの努力不足」という言い分には一理あります。

「箱根駅伝が生み出すお金はどこへ行った?(関東学生陸上に目に見える形で還元しろ)」(大迫傑)というのは正論です。

②については、人気のない陸上競技種目を救済する必要があるのか?という反論があります。

五輪でも不人気種目は削除されます。

たとえば、男子100m走など人気種目の利益をソフトボール救済に使うなんて、バカげています。人気のない種目は消えるべき。日本だけで人気があるのならロビー活動を強化して、男爵どもの頬を札束で叩いて「ソフトボールは聖域」と思わせることです。

人気種目に金と人を集中するのは当然です。「箱根駅伝部は陸上部じゃない。短距離やフィールドにも投資しろ」なんて、共産主義的な思想です。

スポーツは公平な条件で戦うからスポーツです。

予選会のレースで勝ったのに、インカレポイントで負けた、なんてありえません。その試合に全く関係のない大会の成績が結果を操作するなんて犯罪的です。絶対にあってはいけません。ボクシングのキャッチウェイト以下です。

少子化と帰宅部増加で、中高生のスポーツ人口は大きく減少しています。人気スポーツとは到底呼べない陸上競技、その中でもフィールド種目は、いずれ誰もやらなくなるかもしれません。

私たちの時代、国立競技場で開催されていた関東インカレ。まず「サッカーのフィールドを損傷する」という理由からフィールド種目が郊外の競技場に追放されました。

体育倉庫に10年以上も眠ったままの砲丸や槍、ハンマー、ポールなどが老朽化で廃棄されてしまうことも何度か耳にしました。
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新国立競技場の陸上トラックも五輪後、撤去される予定でした。

近い未来「陸上競技」は死語になるかもしれません。

他のスポーツ選手も教えを請う、日本史上で最高アスリートの一人、室伏広治の後継者が現れることも永遠になくなるでしょう。

諸行無常の資本主義の国で、こんなことを書き連ねても野暮なだけです。

競技場からトラックが消え、陸上競技が死語となり、箱根駅伝だけが一年一度盛り上がる。

少し前まで、関東ローカルの箱根駅伝は、世界を目指すランナー育成の障害物の一つと考えられてきました。

しかし、視聴率だけならダントツで日本最高のスポーツになった箱根駅伝のレベルアップは想像を絶する領域にまで達しています。

世界のトラックレースで勝負できる、三浦龍司のような才能も生み出しました。箱根路で燃え尽きるのではなく、五輪やダイアモンドリーグを口にする選手が増えてきたのも、素晴らしいことです。

箱根と世界の距離は間違いなく縮まっています。

陸上競技が死語になったトラックも水濠もない近未来。瀬古利彦ですら「通用しない」と諦めたトラックレースの舞台で、世界をねじ伏せる箱根ランナーが躍動しているかもしれません。