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将棋盤もリングもどっちも四角い。

そんな屁理屈くらいしか、この二つの競技に共通点などありません。

将棋は日本限定に束縛されたボードゲーム。同じ性格を帯びる大相撲よりも人気はないとはいえ、ドメスティックな色彩には似つかわしくない真っ直ぐな尊敬を集めています。

そこには「藤井聡太はラスベガスで大きなイベントに出場する」「もう日本では見られなくなる」などという、米国や世界への闇雲な憧憬はありません。

しかし、一般紙やテレビで世界を舞台に活躍するアスリートを凌駕するほどの扱いを受け続けています。

一方で、ボクシングはやたらと「世界」を騙りながらも、軽量級においては殆ど全ての世界戦が国内で消化される〝羊頭狗肉〟。

その例外は、人気スターが箔をつけるために報酬を度外視して海外で戦ったり、人気のない無名選手がアウエーのリングに引っ張り上げられるケースです。
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将棋とボクシングは名前だけは誰もが知っていても、その世界については誰も知ろうとしない、つまりはけして人気のある競技とはいえない、そんな共通点はあるかもしれません。

二冊のナンバー誌を読み比べると、一般的にはよく知られていない、この二つの世界へのアプローチにおいて、大きな違いがあることに気づかされます。

「藤井聡太と将棋の天才。」では藤井のルーツでもある板谷一門の系譜を戦後から辿り、過去と現在の天才たちを交錯させて、その世界をわかりやすく浮き彫りにしています。企画の意図が手に取るようにわかります。

「藤井君は(受けの将棋である)振り飛車をしたことがないでしょう」「その意味では振り飛車を嫌った(戦後の中京棋界の発展に尽くした)板谷四郎九段の将棋を受け継いでいる」。

将棋を知らなくとも十分に面白く、マニアックなファンが読んでも楽しめる内容でしょう。
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一方で「KO主義。」では、一貫性のない記事が羅列され、ボクシングファンが読んでも非常に断片的な寄せ集めに感じてしまいます。

「名王者オマール・ナルバエスがなすすべもなく新鋭に沈められた一戦は、インターネットでまたたく間に海外に拡散され 、一夜明けたら井上尚弥の名は世界に知れ渡っていた」という一文は、世界のボクシングを少しでも知っているファンが読むと鼻白んでしまいます。

おそらく、多くのボクシングファンやその予備軍が期待したのは、井上の現在位置が本当はどこにあるのか、それをファイティング原田やマニー・パッキャオらを道標に分析してくれるような内容だったのではないでしょうか。 

「オリジナル8の時代に2階級制覇した原田と、現代の4階級制覇・井岡一翔はどちらが上か?」 。「井上尚弥が原田以来のモダン部門で国際殿堂入りを果たすには何が必要か?」…そんなテーマからアプローチすると、現在のボクシング界の真実が明確に見えて、より興味深い内容になったはずです。
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「藤井聡太と将棋の天才。」は発売日当日に3万部、4日に5万部の増刷を決め、累計発行部数が20万部にのぼっているそうです。

プリントバージョンの雑誌が大不況の中で驚異的な数字です。 

近年好調な売り上げを記録したのは、野球やサッカーを凌いでいずれもラグビー。2015年に日本代表が南アフリカを破ったときの臨時増刊「桜の凱歌(がいか)」が18万7000部、日本代表が躍進した2019年のラグビーW杯特集「突破」が17万部。

発売から三日しか経っていない「藤井聡太と将棋の天才。」は、まだ数字を伸ばしそうな勢いです。