世の中はいつだって納得できない矛盾ばかりが溢れています…。

矛盾だらけです。

しかし、二つの拳、それもナックルパートだけを使って、どちらが優れているかを競うこのスポーツがSweet Science と呼ばれていることには、あまりにも納得がいき過ぎて「ボクシング=科学」という見事な等式には惚れ惚れするしかなく、もはや芸術的に美しいほどです。

統計学という小さな枠組みの中に閉じ込められたているのが球遊びだとすると、ボクシングは宇宙を語る科学なのです。

そんな自慢の宇宙ですが、何故か17もの階級があります…。

「宇宙は一つちゃうんけ?!」「球遊びでもデカイ奴が有利やけど、階級なんてないぞ!」と問われたら、私は目を逸らすしかありません。

大昔は、もちろん階級などありませんでした。 階級が出来ても、ヘビー(重い)とミドル(普通)とライト(軽い)。
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「やがて一つの細胞が三つ分かれ…」。「妖怪人間ベム」の前説ならここで終わりですが…。

ボクシングの場合は「さらに8つに分かれ…」。。。の段階までは、胸を張って堂々と世界を歩けたのですが「17にまで分かれて、それぞれ主要4団体が承認…名誉もスーパーも暫定も休養もダイヤモンドもゴールドもシルバーもフランチャイズとかいろいろあるよ」まで増殖してしまうと、もう完全に喜劇です。
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「うふふ。またまたこんなベルトも作っちゃいましたよ〜」。…頼むから別の惑星で作ってくれ。

さて、日本のプロボクシングの階級別競技人口(日本時間3月17日現在=Boxrecによる)です。この数字には0ポイント選手(未勝利やデビュー前)は含まれていません。

ストロー49/ジュニアフライ69/フライ92/ジュニアバンタム97/バンタム107/ジュニアフェザー125/フェザー144/ジュニアライト111/ライト98/ジュニアウェルター60/ウェルター57/ジュニアミドル29/ミドル33/スーパーミドル6/ライトヘビー0/クルーザー0/ヘビー5。

この「階級地図」から伝わることは、日本人にとってのボクシングは17階級ではなく「ストローからミドルまでの13階級」であること。

そして、それにもかかわらず日本人はヘビー級への夢を諦めていないということです。ライトヘビーもクルーザーも競技人口0なのに、無差別級への憧れを捨てきれないのです。

なんて夢のある「階級地図」でしょうか!こういう往生際の悪さは大好きです。

藤本京太郎が惨敗に沈んだ試合終了のコールは、本当は明日につながる試合開始のゴングだったのかもしれません。

今夜の話は、Divisional Paradox 。

酔っ払いにとってパラドクス=paradox =と聞いて、すぐ思い浮かぶのはFrench paradox(喫煙率が高く、脂質の多い食生活を送っているフランス人は赤ワインを飲みまくってるから心臓病にならない。酒飲みは病気にならない!)ですが…。

日本のボクシングファンはみんな気づいていますが、しっかり目を逸らすparadox もあります。

言ってみれば、FFEATHER−WEIGHT paradox 。

日本が世界王者を送り出してきた13階級。階級別で競技人口が最も多いのはフェザー級ですから、このクラスからチャンピオンが最も多く輩出されてきたはずなのですが、現実は…。

また、バンタム級(107人)とライト級(98人)の競技人口の差は9人、ここに大きな差はありません。

しかし、バンタム級では長期政権王者が続々と誕生し、PFPファイターまで登場しているというのに、ライト級は王者すら滅多に生まれない超がいくつも付く〝難産階級〟になっています。

「ライト級は論外、フェザー級ですら日本人にはレベルが高いから、そんなの当たり前」で全てが説明できるのでしょうか?

日本人がヘビー級に見る夢が「見果てぬ夢」になってしまっていることの原因について、いくら楽観的な私でも民族的な体格要素を否定することは出来ません。

しかし、ヘビー級とは違いフェザー級は日本人にとって「コア階級」のはずです。

「レベルが高すぎる」というウェルターにしてもマニー・パッキャオ(166㎝)、マイキー・ガルシア(168㎝)、ショーン・ポーター(170㎝) 、キース・サーマン(171㎝)、テレンス・クロフォード(173㎝)ら多くのトップ選手は、平均的な日本人から見て劣等感を感じるフレームではありません。

アジア時代のパッキャオ。ジュニアフライで世界を狙った井上尚弥。二人とも減量の檻に閉じ込められた獣でした。

二人が、恐らくはリングの上よりも過酷な減量の檻の中で萎んでしまわなかったことは、ボクシングファンにとって幸運でした。…。