専用アリーナを持たないプロボクシングは、実に多種多様な会場を〝間借り〟する形で行われてきました。

それもまた、ボクシングの脇役的魅力になっています。

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一般的なのはアリーナやコンサートホール。

後楽園ホールに有明アリーナ、横浜アリーナ、MGMグランドガーデン・アリーナ、T-モバイル・アリーナ、マディソン・スクエア・ガーデン…。

そして、屋内アリーナに収まらないメガファイトは野球やサッカー、アメフトのスタジアムにリングを特設しています。

マニー・パッキャオはカウボーイズ・スタジアム(AT&Tスタジアム)、カネロ・アルバレスはカウボーイにミニッツメイド・パーク、アンソニー・ジョシュアはウィンブリー・スタジアムやトットナム・ホットスパー・スタジアムでメガファイトを繰り広げました。

ミゲール・コットもヤンキースタジアムの特設リングで戦っていますが、ライトスタンドとアリーナ席だけを使って残りは封鎖。試合当日は雨にもたたられ、いろんな意味でコットのホーム、マディソン・スクエア・ガーデンで良かった。

屋根のある東京ドームや大阪ドームはアリーナかスタジアムか、形状的には微妙なところです。ボクシングの興行ではスタンド席とアリーナ席がセットされますが、普段はスタジアムとして利用されているので「スタジアム」です。

闘牛場なんてのも、よくありました。平仲明信がWBAジュニアウェルター級王者エドウィン・ロサリオを92秒で破壊した大番狂せが、メキシコシティーのエル・トレオ闘牛場でした。

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パンデミックの最中では、MGMグランドの会議室を完全防疫したTHE BUBBLE のリングに井上尚弥も登場。リングが置けるスペースがあれば宴会場でも会議室でも会場にしてしまうボクシングの機動性は、他のスポーツではまずお目にかかれません。




前置きが長くなりました。

プロデビュー戦をなんとニューヨーク・タイムズスクエアのリングに上がった堤麗斗の次戦の舞台がやはりニューヨークのルイ・アームストロング・スタジアムに決まりました。

テニスの全米オープンが開催される由緒あるスタジアム。

センターコートは黒人テニスプレイヤーのパイオニアの名前を冠した、一回り大きなアーサー・アッシュ・スタジアム(収容2万3000人)ですが、「アームストロング」も1万4000人を飲み込む巨大なテニスコートです。

テニスに興味がなくても、ボクシングファンならマイク・タイソンの左肩に彫られたタトゥーの人物といえば見たこと、聞いたことがあるでしょう。

ちなみに右肩は毛沢東、左の腹にチェ・ゲバラ。






リングの大きさと構造がよく似た「テニスコート」は、ボクシングの会場に転用しやすいのでしょう。

1980年代のボクシングを知っている人は、当時のメガファイトの定番・シーザースパレスのテニスコートと駐車場に特設された屋外リングが真っ先に思い浮かぶでしょう。

現在、最も有名なのは西岡利晃がノニト・ドネアに玉砕、亀海喜寛がミゲール・コットに挑んだカリフォルニア州カーソンのホームデポ・センター(現ディグニティ・ヘルス・スポーツ・パーク)です。

また、ジョージ・カンボソスは全豪オープンのセンターコート、ロッド・レーバー・アリーナでデビン・ヘイニーとの再戦を戦っています。


それにしても、堤麗斗。デビュー2試合がニューヨーク。第1戦がまさかまさかのタイムズスクエア、2戦目がルイ・アームストロング・スタジアム。

日本で後楽園ホールや有明アリーナで試合をして辺りを見渡すと、何か物足りない気がしてしまいそうです。

ジャズの巨星ルイ・アームストロングの名前を頂くスタジアム。歴代PFPの上位に挙げられることが多い偉大なボクサー、ヘンリー・アームストロングとは関係ありません。


それにしても「アームストロング」です、アームストロング。

「ルイ」は音楽界の巨星。「知らない」と思ってる人でも歌ってるとこを見れば、世界中の誰もが知っているグレートです。

ボクシングファンにとっては、オリジナル8、全ての王者がUndisputed championだった時代に3階級制覇、4階級目のミドル級はドローで届かなかった「ヘンリー」の「3/8(4/8?)」は、団体と階級が増殖した現代のマニー・パッキャオの「8/17」とは比較にならない偉業です。

「ランス」・アームストロングは、アスリートとして世界で最も有名で最も大きな成功を収めた「アームストロング」です。そして、「アームストロング」を超えて、歴史上で最も大きな醜聞を巻き起こしたアスリートでもあります。

さらに、音楽やスポーツの枠を超えて世界で最も有名なのは、人類で初めて月に降り立った「ニール」・アームストロングかもしれません。

そして、直近ならシカゴ・カブスのPCA、ピート・クロウ=アームストロング。まだ何も成し遂げていない23歳のPCAが特別な期待感を漂わせているのは「アームストロング」という名前だけがその理由であるのは疑う余地もありません(個人の感想です)。

俺も欧米で生まれ変わって名前を選べるなら「アームストロング」がいいな。

堤麗斗は「アームストロング」ではありませんが、彼らのような偉大なキャリアを二つの拳で築き上げてくださいませ。ド派手な会場でデビューしたことをファンが忘れてしまうような、ド派手な活躍を期待しています。