ダビド・クエジャルは未完成品でしたが、素材は一級品、けして評価の低いファイターではありませんでした。

過去の試合動画で見る左リードに立ち昇っていたのは、刃物のような危険な香り。

あの左から右に繋ぐ攻撃は、中谷陣営も警戒していたはずです。

ーーー興味深い数字が出ています。

クエジャルは、1発の左もヒット出来なかったのです。

それは、試合終了までの9分4秒の間はたまたまヒットしなかっただけかもしれません。

右は当てているので、前の手(リードパンチ)がヒットしないのは偶然か、深読みすればクエジャルの作戦で序盤は得意な攻撃パターンを隠していたのかもしれません(23歳のメキシカンにそんな余裕などないことは明らかでしたが)。

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あの惨劇にスタッツがどれほどの意味を持つのかは正直、わかりません。

ただ、事実として9分4秒の時間の中でメキシカンは自分の年齢よりも一つだけ多い24発のリードを放ちましたが、中谷には1発もヒットさせることが出来ませんでした。

たったの1発も、です。

レイノソ一門が自信を持って送り込んだ〝将軍〟クエジャルでしたが、攻撃パターンを司る左リードが完全に見切られてしまったのですから、万事休す。

さらに、第1ラウンド開始すぐに「クエジャル、中谷の左が見えていません」と村田諒太が指摘したように、相手の後ろ手、つまり大砲に対して全く無防備な自分がいかに大きな危険に晒されているかにクエジャルは恐怖したはずです。

自分の攻撃は起点から完全に遮断され、相手の大砲が見えない…これで心が折れないファイターがいるとしたら、その人の名前はイスラエル・バスケスかラファエル・マルケスでしょう。

「いまは見えなくても、打たれているうちに出所が見えてくるはず」。そんな覚悟を決めるにも、中谷の攻撃はあまりにも苛烈すぎました。

試合後のリング上で 宣言したように、中谷はIBFのストラップを持つ西田凌佑との統一戦に乗り出すようですが、そこに勝敗への興味はありません。

そもそも、バンタム級だけでなく隣接階級を見渡しても、中谷にとってヒリヒリする相手はもう1人もいません。



ーーーたった1人を除いて。