「序」

本来、スポーツとは非常にわかりやすいものです。

突然変異だユニコーンだと世間を騒がせている大谷翔平は単純な才能的には10年に一人、あるいは5年に一人のレベルでしょう。しかも、これは日本限定の話。

世界レベルなら〝大谷翔平〟は、あちこちにいるはずです。

もちろん、〝大谷翔平〟が顕在化するかどうか、つまり才能が開花するかしないか、あるいはどこまで 開花するのかは、本人の情熱に依る度合いが非常に大きいことは言うまでもありません。

才能に適した競技を選び、正しい時期に正しい情熱を集中できる環境が不可欠なのです。

ほとんどの才能は、その才能を考えると大輪に至らないばかりか、開花すらしない場合も数え切れません。

大谷翔平の場合は、その選択と情熱や環境のタイミングが 、奇跡的にほとんど「正解」に近い形でクリアされてきただけであって「100年に一度の才能」でもなければ「奇跡」でもありません。

正確には、才能と選択、情熱、環境…すべてのタイミングが「100年に一度」であり「奇跡」なのです。

この極めてわかりやすい大谷翔平と同じ年に、藤浪晋太郎という、極めて難解な才能が誕生したことは、冗談でもなんでもなく神の采配にすら思えて来ます。

彼らは、現代のカインとアベルです。

身長197㎝、体重98kg という体格は大谷翔平を凌駕し、高校時代は「どちらがプロ向きか?」というテーマに対して全く五分に別れる議論が展開されていたのは、今では笑い話です。

データ解析に優れたMLB。オークランドのスカウトは何を見誤ったのか、それとも全て織り込み済みなのか。

セ・リーグでは江夏豊以来、46年ぶりに高卒ルーキーで10勝をマーク。あの江夏をして「僕なんかより才能はぜんぜん上」と言わしめたというのに。



人の話を聞かないと言われる。精神的に弱いと言われる。

100マイルを超えるファーストボールを投げる技術がある、そしてそれは生半可な練習では投げることではありません。

技術の問題なのか、精神的な問題なのか、そよ両方なのか、あるいはもっと別の問題があるのか。

これは投球術を裏付ける生理学や物理学、精神を司る哲学、心理学、あらゆる学問を総動員しなければ答えの出ない問題かもしれません。


21世紀に入り、絶対に解けないと言われた「ポアンカレ予想(単連結な3次元閉多様体は3次元球面S3  に同相である)」が証明されたと思ったら、突如として湧いて出たのが「藤浪晋太郎問題」です。

ポアンカレ予想を最初に提出したのはアンリ・ポアンカレ、1904年のことでした。

そして、2006年にそれが成立することを証明したのが、グレゴリー・ペレルマン。102年間、一世紀以上かけても誰も解けなかった難問でした。

「藤浪問題」が提起されたのは2017年前後。

まだ、5年程度しか経っていませんが、問題の宿命的性格としてタイムリミットが迫っています。100年なんて悠久の時間はありません。

そして、やはり絶対的宿命として、問題を解いてくれるグレゴリー・ペレルマンは現れてくれません。

藤浪晋太郎自身が解答を見つけなければならないのです。